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コロナ時代に考えたい学校問題【第130回】

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論説・コラム

給食調理員の人間関係トラブル

 「仕事しないからみんながストレス/小学校の給食調理員がパワハラ、減給処分/千葉県松戸市」といった見出しの記事を目にした。
 ここで指摘したいのは、給食調理員の管理指導は誰が行うのかと言うことである。
 以前は市の職員として雇用されていた。最近は業者委託が増え、その業者が雇った人が調理に当たっている。
 校長を務めていたころ、ノロウイルスが調理員から発症した。当初、調理員を雇っていた業者は「子どもからだと思います」と責任を回避するような回答をしていた。結果として調理員が感染していたことを認めたが、不信感は拭えていない。この学校の献立は栄養士がつくり、調理員のほとんどは近隣の方で、児童の保護者も雇用されていた。
 今回のパワハラが事前に把握されていたのならば、何故にこのニュースになるまで放置されたのかと言うことになる。
 一番に把握できたのは栄養士であり、栄養士が適切に報告していたのなら管理職の判断が問題になる。その望ましくない人事管理責任は校長にあるのか、この業者の責任にあるのか、委託契約をしている市にあるのか、また、契約書にどのように記載されているのかも把握しておく必要がある。
 私ならば、現場にいるものとして、現状を早く掌握し、常識的な指導助言をするだろうが、業者委託として手を出せないとしたら、せめて契約主体の教委からの改善を依頼するだろう。ほとんどこうした迅速な手を打たずに、責任回避が起きていたと思われる。教育の基本は利他であるのだから、縦割りの弊害として済ますところには私利しか存在しない。
 調理員も大切な職員として顔見知りであるのなら、組織として働きやすい人間関係を作ることを皆が心掛け働き掛ける事である。調理の基本は人間関係にある。
 私はこうした案件には意図的に関与してきた。一番よい結果につなげることができても、教委から指導を受けた。「組織が違うので、介入しないように」である。その度に「組織が先か、人が先か」と、担当を困らせた。ある意味、教委の反応は想定にないである。よって一度も懲りたことはない。
 調理員の怒りの心が料理にも道具にも伝わり、子どもが食する料理に怒りが確実に混入する事になるからである。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

コロナ時代に考えたい学校問題