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自律的に学び続ける教師をサポート コロナ禍で再評価された通信制大学の魅力

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大学通信教育特集

 これからの教員には、予測不可能な社会に対応した幅広い知識や高い専門性を備えることが求められており、文部科学省では複数免許の取得や免許状取得要件の弾力化、小学校高学年における教科担任制の本格導入などを推進し、教員の資質・能力の向上を図ろうとしている。その中で、教員が自律的に新しい知識・技能を学び続け、スキルアップを実現する場として注目度が高まっているのが、多様な教科・校種の免許を働きながら取得できる「大学通信教育」だ。

現職教員の複数免許取得の受け皿に
 文部科学省では9年間を通じた教育課程の編成で系統的な学びを実現する義務教育学校・小中一貫校へのシフトや、英語、算数、理科を対象に子どもの学びを深める専科教員の拡充を進めており、「教科の専門性を持った小学校教員」や「小学校教育を熟知した中学校教員」のニーズが大きくなっている。こうした時代の流れに沿い、現職の教員が上位免許や他校種の免許状を取得するケースが増えており、その受け皿となっているのが大学通信教育だ。
 大学の通信教育課程で取得できる教員免許は普通免許状で、小、中、高、特別支援学校、幼稚園教諭、養護教諭、栄養教諭の免許状があり、それぞれ専修、1種、2種に分かれている。免許状取得の代表的なものとしては、

 (1) 新たに教員免許状を取得する場合
 (2) 現在持っている免許状を上位の免許状に上進させる場合
 (3) 現在持っている免許状を基にして同校種の他の教科の免許状を取得する場合
 (4) 教職経験を有する者が隣接校種免許状を取得する場合

 ―の4つがある。

 学習方法は印刷教材による授業が中心で、足りない部分を面接授業(スクーリング)や放送授業、インターネットなどを活用したメディア授業で補うとともに、学習指導(教育・学習上の指導)が行われるのが特色。これらの学びを通して科目ごとの試験に合格することで、単位を取得できる仕組みだ。しかも、教員としての在職経験が3年以上あれば、少ない単位数で上位の免許状や他校種の教員免許状を取得できるのが魅力となっている。

「学びの専門家」への転換が求められる
 もう1つ、現職の上位免許や他校種の免許状の取得を目指す理由は、社会のニーズに伴う学校の役割の変化によって、求められる教員像も変わってくるからだ。たとえば、新学習指導要領で重視するアクティブ・ラーニングの視点からの授業改善には、教員が従来の「教えの専門家」から「学びの専門家」へと転換を図ることが示唆されている。そこには当然ながら、教員自身が自律的に資質能力を高める努力をすることが必要なのはもちろん、時代の変化や自らのキャリアステージに応じて生涯にわたって高めていくことのできる力も必要とされている。
 また、今日の学校改革を進めていく上では、新たな課題やチーム学校に取り組むことのできる教員が必要になっている。そこでは学校段階間の接続を見通して指導する力や、教科等横断的な視点で学習内容を組み立てる力など、総合的な指導力を身につけることが求められている。
 すなわち、こうしたスキルを持ち得なければ教員として評価されない時代を迎えているのであり、自分自身のキャリア形成にとっても、複数免許の取得などによって新たな領域の専門性を身につけることが必要になっているのだ。

新たな領域の専門性を身につける必要性
 こうした「令和の日本型学校教育」を担う教員の人材確保・質向上に向けて、文部科学省も検討部会を設置し、中長期的な実効性のある方策を検討している。その中では、教員には変化を前向きに受け止め、探究心を持ちつつ自律的に学ぶという主体的な姿勢を持つことが重要と指摘。また、学校側にとっても、変化の激しい社会に対応してより多様な専門性を有する教職員集団を構築するためには、教員自身が全教員に共通に求められる基本的な資質能力を超えて、新たな領域の専門性を身につけるなど強みを伸ばすことが必要としている。
 その上で、このような一人ひとりの教員の「個別最適化」された学びや、具体的な目標の達成に向けた体系的・計画的な実施として期待されているのが、デジタル技術の積極的な活用になる。たとえば、履歴の管理や学びの可視化等を電子的に行う、豊富で質の保証されたコンテンツをいつでもどこでもオンラインで学ぶことができるなど、時間的・空間的制約を超えて効果的かつ効率的に行うことができるからだ。とりわけ、教員が適切な目標を設定するためには、これまでどのような知識技能が身についているのかという「現在の姿」を自覚することが必要になる。自身に対して客観的な評価や成長段階を把握できるデジタル技術の活用は、「将来の姿」に向けた自律的な学びの駆動力になる。

コロナ禍で評価が高まった通信制大学の質保証
 そうした点からも、メディアによる授業のプロ集団とも言うべき通信制大学は、教員が自律的に学び続ける場として強い味方になっている。なかでも昨年以降は、コロナ禍での学校のオンライン授業の遅れや質の低下が顕著となる中で、通信制大学の双方向性を担保するための授業設計やサポート体制の評価が高まっており、中教審の「質保証システム部会」でも取り上げられた。
 通信制大学がこのようなメディア授業において質の維持を実現しているのは、約20年以上前から双方向性の確保を求めて取り組んできた豊富なノウハウと知見があるからにほかならない。加えて、通信教育の団体が独自のガイドラインを制定して自己点検・評価に取り組んでいることも大きな要因といえる。事実、文部科学省も「設問解答、添削指導、質疑応答等による十分な指導を併せ行うものであって、かつ、当該授業に関する学生等の意見の交換の機会が確保されているもの」と評価している。
 近年ではこうしたノウハウを生かし、教員の負担を軽減するオンラインだけによる教員免許更新講習を実施する大学もあるなど進化を遂げている。したがって、大学通信教育は今後の学校教育における学びの保障としてはもちろん、ICTを活用した個別最適化学習を実現していく上においても、大いに参考になるべきものとして再評価されている。

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