測りすぎの時代の学習評価論
17面記事
松下 佳代 著
専門性・総合性高めるアイデア提案
歴史学者ジェリー・ミュラーの著書を取り上げ、邦題『測りすぎ』の原題を「メトリクスの暴政」と直訳する。副題に「なぜパフォーマンス評価は失敗するのか?」と付したのは「明らかにミスリーディング」と指摘して始まる序章は、それこそ刺激的である。
「エビデンス」が声高に叫ばれ、「説明責任」を果たすため測定、指標化する「メトリクス」が大手を振るうのは教育の世界も例外ではないだろう。そこに「測りすぎ」「測りまちがい」はないのか。真正の評価とは何か。
特に、高等教育での学習評価はどうあればよいのかを「学習評価とは何か」「学習成果とその評価の多様性」から「パフォーマンス評価」の理論、事例、「測りすぎ・測りまちがい」などの各章で展開し、「長期的な学びと成長の評価」の章では「パフォーマンス評価を重要科目だけに限定」して取り入れる「PEPA」(Pivotal Embedded Performance Assessment)というアイデアを提案した。それは「複数の重要科目で学習成果を直接評価し、それをつなぐことで学生の学びの<軌跡>の把握と卒業時の学習成果の質の向上をめざす考え方」である。
学び手の専門性・総合性・真正性を高めることが求められるのは教員養成の現場も同様。この考え方を取り入れることはできないか。
パフォーマンス評価やルーブリックの解説は、学校関係者にも有用だ。
(3850円 勁草書房)
(矢)