一刀両断 実践者の視点から【第687回】
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学校現場に「冤罪」はないか
日弁連のホームページによると大川原化工機事件とは、そもそも犯罪が成立しない事案であったにもかかわらず、会社の代表者らが逮捕・勾留され、検察官によって公訴が提起され、約11か月もの間身体を拘束された末に、公訴提起から約1年4か月が経過した2021年7月30日、第1回公判を目前にして突然公訴が取り消されたという冤罪事件である。
このような冤罪が、学校現場でも起きてはいないかと重ねて考えた。つまり、一度色眼鏡をかけて人物を見てしまうと、無意識にその先入観に沿った評価や対応をしてしまうということだ。成績もまた、そうした影響を受けやすい。さらに、役割分担なども、実際の能力や適性ではなく、印象で決められているのが現状ではないか。要するに、十分に見極めることなく、印象だけで判断しているのではないかという疑問である。
かつて民間人面接官を導入した際、その面接官は志願書を見ずに面接を行った。理由を尋ねると、「先入観で判断を誤るから」と答えた。確かに、志願書を読むことで、すでに「出来上がった人物像」を描いてしまうというのは事実である。
人を診ることは、自分自身を診ることでもある。権力を持つ者が、日々こうした冤罪を生みやすい状況にあることを思うと、これは非常に恐ろしいことである。だからこそ、感情に左右されず、常にフラットな視点で人や物事を見極める力が求められる。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。千葉県教委任用室長、主席指導主事、大学教授、かしみんFM人生相談「幸せの玉手箱」パーソナリティなどを歴任。教育講演は年100回ほど。日本ギフテッド&タレンテッド教育協会理事。)