視点 Opinion【第20回】
2面記事こどもの自殺対策 「協議会」が学校の気付きを支援
清水 康之 NPO法人自殺対策支援センターライフリンク代表
極めて深刻な「児童・生徒の自殺」に対応するため、昨年6月に自殺対策基本法が改正され、地方公共団体は「法定協議会」を設置できることになった。どのような意義があるのか。同法制定に関わった清水康之・NPO法人ライフリンク代表に寄稿してもらった。(この記事は、子ども・若者の自殺対策の一環として当面の間、全文を公開します)
児童・生徒の自殺者数が過去最多を再び更新し、昨年は暫定値で532人に上った。世界的にもこどもの自殺が深刻で、SNSやスマホの影響が議論され、利用制限や事業者責任の強化など制度面の対応が進んでいる。
大人にはこどもが安心してこども時代を過ごすことのできる環境を整える責務があり、日本でも自殺リスクを高めている要因への対応を急ぐ必要がある。
同時に、自殺リスクを抱えたこどもへの支援を急がなければならない。これまでも「SOSの出し方教育」や1人1台端末を活用した「心の健康観察」など、さまざまな施策が打ち出されてきた。しかし、現場でそれらが十分に機能していない背景には、「こどもの自殺リスクに気付いた後の支援体制」の欠如がある。
象徴的なのが、端末を用いた健康観察の中身だ。米国小児科学会が提唱するように、こどもの自殺対策においては全てのこどもに自殺リスクについて直接尋ねることが重要となる。直接の問いこそが、こどもに「話してもいい」というメッセージを伝え、SOSへの導線となるからだ。しかし現在、文科省が紹介するツール群で、自殺について尋ねるものは極めて少ない。
なぜ学校は直接問うことをためらうのか。その一因は、リスクを発見した後にどう支援すればよいのか、その「受け皿」が見えないことにある。一人で責任を負い切れない不安が、問うこと自体を躊躇させ、自殺をタブー視する雰囲気を温存させ、結果として対策を遅らせてきた。
この壁を打ち破るのが、改正自殺対策基本法に基づく「法定協議会」である。昨年6月に改正され、この4月から全面施行される同法により、地方公共団体は学校・教育委員会・児童相談所・医療機関・警察・民間団体等で構成する協議会を設置できるようになった。法的根拠を持つ協議会だからこそ、個人情報の共有や機関間連携の正当性が担保され、「気付いたが動けない」状況を制度として乗り越えられる。
学校が「気付き」、協議会が「支援する」。この連携が明確になれば、バラバラだった施策が「法定協議会」を核に連動性を高めていける。
かつて成人の自殺者数は3万人を超えていたが、昨年の暫定値で初めて2万人を下回った。全国で地域の連携体制を構築し、自殺をタブー視せずに対策を進めてきた知見を、こどもの自殺対策に生かすべきである。大人が縦割りを超え本気で動く姿は、こどもへの「あなたの命は社会が全力で守る」というメッセージにもなるはずだ。
(随時掲載します)
