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「短文記述式問題」は32年度スタート

9面記事

高校

「高大接続システム改革会議」最終報告 上
三位一体の改革へ
大学入学者選抜改革

 高校教育、大学教育、大学入試の三位一体改革を目指してきた「高大接続システム改革会議」(座長=安西祐一郎・(独)日本学術振興会理事長、文部科学省顧問)がまとめた「最終報告」(3月31日)を受け、それぞれの新テストの検討が始まる。平成31年度には「高等学校基礎学力テスト」(仮称)を試行実施、32年度には「大学入学希望者学力評価テスト」(仮称)を実施、と中間まとめ段階から示されている導入スケジュールに変更はない。高校教育の新学習指導要領は中央教育審議会答申、新学習指導要領の告示を経て、34年度から学年進行により実施する予定だ。今後本格化する高校教育、大学教育、大学入試の三つの改革について3回にわたって取り上げる。今回は「大学入学者選抜改革」。

思考・判断力の発揮期待
出題は「国語」を優先

 今回の「高大接続システム改革」は、単に大学入試の改革ではなく、高校教育、大学教育、大学入試の三位一体改革であることが強調されてきた。それでも社会全体の耳目を集めてきたのは、大学入試センター試験に替えて実施されることになる「大学入学希望者学力評価テスト」の内容であった。
 特に、「大学入学希望者学力評価テスト」に導入する「記述式問題」に関心が寄せられた。
 「大学入学希望者学力評価テスト」では思考力・判断力・表現力などを中心に測り、個別の大学の入試では、さらに多面的な評価をしながら、多様な人材を受け入れ、グローバル社会で活躍できる人材に鍛えていく。今回の教育改革を実現する上で、「大学入学希望者学力評価テスト」の意義は大きく、その中核に「記述式問題」が位置付くためでもあった。
 「最終報告」では、「記述式問題」について、解答を選択肢の中から選ぶのではなく、自らの力で考え出すことにより▽より主体的な思考力・判断力の発揮▽文や文章を書いたり、式やグラフなどを描いたりすることを通じて思考のプロセスがより自覚的なものとなることにより、より論理的な思考力・表現力の発揮▽記述により自らまとめた新しい考えを表現させることにより、思考力や表現力の発揮―を期待できるなどをメリットとして挙げている。
 「作問」については「設問で一定の条件を設定し、それを踏まえて結論や結論に至るプロセス等を解答させる『条件付記述式』を中心に作問を行うことにより、問うべき能力の評価と採点等テスト実施に当たっての課題の解決の両立を目指す」とした。
 対象教科は、「当面、高校で共通必履修科目が設定されている『国語』『数学』とし、特に記述式導入の意義が大きいと考えられる『国語』を優先」する。
 導入は「短文記述式の問題」を32年度から35年度までの現行学習指導要領下で、「より文字数の多い記述式の問題」を36年度以降の次期学習指導要領下で、と時期を明示した。
 約50万人が受検する大学入試センター試験と同様の規模で、記述式問題の採点の公平性を担保しながら、一定期間内に採点業務を終えることが可能かも検討課題になったことから、「最終報告」では、採点過程の効率を上げるために「人工知能(AI)技術」の活用まで引き合いに出したが、「今後、共通テストとしての採点の信頼性・妥当性や大学の関与の在り方等に留意しつつ、技術開発の可能性や人的・時間的・財政的コストも勘案しながら、更に実証的・専門的な検討を行う」と、今後に委ねた。
 実施時期についても「マークシート式問題と同日に実施する案、マークシート式問題とは別の日に実施する案のそれぞれについて検討を行う」とした。
 一方、「大学入学希望者学力評価テスト」での英語については「話すこと」「書くこと」「聞くこと」「読むこと」の4技能の評価を推進する。
 その際、例えば、「各大学の判断により、民間の英語の資格・検定試験について、『大学入学希望者学力評価テスト(仮称)』の英語の代替として活用したり、個別選抜において活用したりすることも有効である」と提案した。
 コンピュータを活用した試験、CBTの導入は現行学習指導要領下での32年度から35年度は「試行」に取り組む期間とした。
 高大接続改革答申で大学入学希望者に資格試験的な利用として「年複数回実施」が提言されたが、日程上の問題などなお課題が多く、「引き続き検討が妥当」と先送りした。

AO・推薦入試を改善
評価テスト活用などで
個別大学入試

 個別の大学における入試改革については、「大学入学希望者学力評価テスト」の結果や、自らの考えに基づき論を立てて記述させる評価方法、調査書、活動報告書、各種大会や顕彰等の記録、エッセー、面接、ディベート、集団討論、プレゼンテーションなど、「学力の3要素」を多面的・総合的に評価改善することを求めた。
 また、「学力不問」と指摘されるようなAO入試・推薦入試を改善し、「入学者受入れ方針に基づく多面的・総合的な入学者選抜を確実に実施し、各大学で学ぶ力を備えていると判断される受検者を受け入れること」と提案した。
 その際、小論文、プレゼンテーション、推薦書等の多様な評価方法、出題科目の見直しや作問の改善、「大学入学希望者学力評価テスト」の活用などを例示した。
 さらに「『AO入試』『推薦入試』『一般入試』の在り方の見直しなどを通じた新たなルールづくり」を提唱した。

新テスト実施方針
29年度初頭に策定・公表

 入試改革についてのスケジュール=図参照=を見ると、「大学入学希望者学力評価テスト」の導入に向けては、まず28年度中に「対象教科・科目の出題内容や範囲、記述式および英語の実施方法と実施時期、プレテストの実施内容、正式実施までのスケジュール」について検討し、「実施方針」を29年度初頭に策定・公表する。
 30年度をめどに「プレテストを実施」する。その上で、「実施大綱」は31年度初頭をめどに策定・公表するなどとした。
 「大学入学希望者学力評価テスト」の実施は、これまでの予定通り、32年度に現行学習指導要領下で開始、36年度に新学習指導要領下で実施と、2段階に分けた工程を掲げた。
 個別大学における入試改革については、28年度中に大学入学者選抜実施要項について高校・大学関係者による協議をする。具体的には、AO入試・推薦入試・一般入試の在り方の見直しや、調査書の見直しなどである。
 協議結果を踏まえ、29年度初頭に「大学入学者選抜実施要項の見直しに係る予告通知」を発出後、32年5月に「平成33年度大学入学者選抜実施要項」を発出する。各大学での選抜の実施は32年度から始まる。これは現行学習指導要領下でのもの。
 新学習指導要領対応では、33年度内に通知。「平成37年度大学入学者選抜実施要項」は36年5月に発出し、36年度に各大学が選抜を実施する。

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