日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

コミュニティ・スクールの導入で学校はどのように変わる?

トレンド

特集 教員の知恵袋

 保護者代表や地域住民、地域学校協働活動推進員などが一定の権限を持って運営に参画する公立学校のコミュニティ・スクールが注目を集めています。学校の運営に地域の声を積極的に活かすコミュニティ・スクールではどのような活動が展開されているのでしょうか。

保護者や地域住民らが学校運営協議会を組織

 日本のコミュニティ・スクールは「学校運営協議会」を導入している学校のことを指します。学校運営協議会は保護者や地域住民らで構成する組織で、2004年の地方教育行政組織法の改正で設けられました。

 欧州にもコミュニティ・スクールはありますが、日本とは少し制度が異なります。英国の場合は選挙で選ばれた人たちで理事会を組織し、校長を任命します。日本で言えば私立学校のようなもので、校長は理事会の方針に従って学校を運営する仕組みです。

 これに対して、日本のコミュニティ・スクールは従来通り、校長が最高責任者を務め、校長の方針を承認したり、意見を述べたりすることが学校運営協議会の役割です。教職員の任用については教育委員会へ意見を述べられます。

地域に開かれた学校づくりが目的

 日本では1990年代の前半まで学校教育は学校が担うもので、保護者や地域住民が介入すべきでないとする風潮が強く残っていました。

 しかし、1990年代後半から「生きる力」を子どもたちに身に付けさせることを目標に教育内容が変化し、保護者や地域住民の学校参画を求める声が高まります。さらに1998年の中央教育審議会答申では、地域に開かれた学校づくりと地域コミュニティの形成が提案されました。その結果、2000年に首相の私的諮問機関・教育改革国民会議で提案されたのがコミュニティ・スクールの概念です。

 以前にもPTAのような保護者や地域住民が学校と関わる仕組みは整備されていましたが、2004年のコミュニティ・スクールの導入により保護者や地域住民が法律に基づき、学校運営について一定の権限を持って議論できるようになりました。

全国で5,432校、法改正で一気に急増

 文部科学省によると、コミュニティ・スクールは2018年4月現在、全国で5,432校が設置されています。内訳は幼稚園147園、小学校3,265校、中学校1,492校、高校382校です。前年同期と比べると1,832校(園)増え、1年間で一気に1.5倍になりました。

 急増の理由として考えられているのが、2017年4月に行われた地方教育行政組織法の改正です。地方教育行政組織法により、学校運営協議会の設置が従来の任意設置から努力義務化へ変わりました。

 これに伴い、学校運営協議会を設置する学校設置者の数も2017年4月の11道県367市区町村から2018年4月で18道府県532市区町村にまで拡大。なかでも熊本県は全ての県立学校に学校運営協議会を設置しています。

学校評議員制度より高い実効力

 学校運営協議会と同様に、学校運営に保護者や地域住民の声を反映させる制度として学校評議員制度があります。学校評議員制度は2000年に行われた学校教育法施行規則の改正で制度化されたものです。設置者の判断で置くことができ、校長の求めに応じて意見を述べられます。

 しかし、あくまで意見を述べるだけで意見の採用については校長の裁量に委ねられています。これに対して、学校運営協議会は意思決定をする合議体です。委員の意見が学校評議員制度より実効力が高いので、保護者や地域住民の意見が学校運営に強く反映されます。

地域とともにあるために必要な3つの視点

 コミュニティ・スクールは地域とともにある学校です。より良い学校の運営を行うために必要な視点が3つあります。

 ・関係者が当事者意識をもって「熟議(熟慮と議論)」を重ねること
 ・学校と地域の人たちが協働して活動すること
 ・学校が組織として力を発揮するためにマネジメント力を備えること

引用=https://www.nits.go.jp/materials/intramural/files/024_001.pdf
<地域とともにある学校の運営において大切な視点>

 この3つがそろうことで目的の共有や課題解決が可能になります。

当事者意識を持ち、熟慮と議論

 熟議とは多くの当事者が熟慮と議論を重ねながら、課題解決を目指す対話のことです。保護者や地域住民、教職員らが集まり、学校や地域の課題を共有して熟慮と議論を進めることで、互いの立場や果たすべき役割の理解を深められます。

 その結果、解決策が浮上し、それぞれが納得して自分の役割を果たします。議論が活発になればなるほど多くの人の意見が学校運営に反映されることになります。

行動は地域住民らと学校が協働で

 熟議でビジョンや目標を共有されたら、目標達成に向けて行動しなければなりません。

 しかし、熟議で出た意見を速やかに全て実行できるわけではないです。できることから着手することにより、協働体制が構築されます。そのなかでそれぞれが自分の役割を果たします。考えられる活動としては地域住民の専門性を生かした教育活動や地域の清掃活動などが挙げられます。

マネジメント力の育成も必要

 目標に向けて行動を始めた際、それらをやり遂げる必要があります。そのとき重要になるのがマネジメント力です。

 協働の中核となる学校では、校長のリーダーシップの下、教職員がチームとしての力を発揮できるようにならなければなりません。保護者や地域住民らとの連携にも気を配る必要があります。

風通しの良い学校へ市民の理解が大切

 コミュニティ・スクールが設置されることで、保護者や地域住民と学校の溝が埋まり、風通しの良い学校運営が望めるでしょう。

 学校が地域の力を活用し、地域の課題解決に学校が協力した際には新しい可能性が広がることも考えられます。そのためには市民がコミュニティ・スクールについてもっと理解を深めていく必要があります。

特集 教員の知恵袋

連載