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一刀両断 実践者の視点から【第2回】

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机上のコンパスで高校受験、無効への疑問

 広島の高校入試で、コンパスが机上にあったことで受験を無効にしたという酷いニュースが報じられた。
 何をやらかしているのか。この対応は主催者側の明らかなミスであり、試験において論外であることは明らかである。報道の内容がすべてとすれば、関係者の処分と手厚い救済措置が求められて当然の事になる。
 呆れるのは、担当課長の言い分である。「1、2限の監督者はコンパスの持ち込みに気付いていたようだが、校長まで報告は挙げていなかった。ただ運用をしていくときに公正にどのようにやっていくかっていう部分になると一定の規則があるので、ここのところは規則通り(無効に)させていただく」と報じられている。
 この意味不明な説明こそ自らの非を認めているようなものである。こうした大失態を誤魔化す詭弁の醜さを久しぶりに見た気がする。
 このような理不尽な説明は関係者が集まり、考えて、ひねり出した極めて歯切れの悪い回答に思える。かつてこうした職務に携わったものならば、どう処すべきかは分かるだろう。
 受験生の立場は一般的に弱い。その視点から公正公平に判断出来ない責任者は明らかに不適な人物と言えまいか。大人としての恥を知らねばならない。やがて自滅していくだろうが、一生後悔することになる事は間違いない
 受験生の夢を奪い取り、未来の進路を凡ミスで変えてしまった事実は認めながらも、「規則通り」とするのは、詭弁であり、もっと大元の公正公平な選考が出来なかった事実は規則の前に存在しているはずである。それなくして規則は意味を持たない。そんなことも分からないのだろうか。この回答には長年、教委に潜む権力と保身意識がなせるものと私には感じられる。
 私も長年、選考を企画し運営しそれなりの失態もしてきたが、是々非々は分かっていた。せめて他へと進学せざるをえなかった生徒に関係者全員が即刻謝罪をして、その学費一切を分担して支払うべきではないだろうか。その費用は税金ではなく、関係者がまかなうべきであり、安直に税金を充てて済ませるような「事件」ではない。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

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