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一刀両断 実践者の視点から【第41回】

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熱海市の土石流

 静岡県熱海市で土石流が発生し、大きな被害が出ている。そもそも土石流の恐ろしさは一般にはあまり理解されていない。富士山も大沢崩れなど、土石流が起きて山肌の景観を変えてしまっている。数メートルもの大きさの岩もろともに濁流が流れ出すためにその破壊力はすさまじい。
 今回の被害箇所は、急な斜面であり、研修施設やリゾートホテル、そして別荘のような民家が点在している。山にも雨が降る。斜面の木々を取り去り、自然の摂理に反する建造物を建てるのだから、保水能力を失った斜面は耐えきれずに崩落してしまう。
 私は小学校の学級担任の時に、こうした話を児童に真剣に語った。実体験に基づく話であるために熱く語った。その影響は顕著で、土木や建築の道へと進んだ子ども達があまりに多いことを20年後の同窓会で知った。ある意味責任を感じたが、それが教師であることは間違いがない。
 今回の被害は、地形や、斜面を塞ぐ道路や建造物からして、水流が何処にどのように行き場を作るかと考えると、発生は想定内の出来事であったと言える。ご冥福を祈りながら、災害復旧へ携わる面々はニュースになるが、その後整備するまでの工事関係者の姿はあまり取り上げられないことを思う。私はこの仕事を経て教師になったから、ついつい熱が入ってしまう。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

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