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教育制度エッセンス 多様性の中で制度原理を考えるために

12面記事

書評

九州大学教育法制+社会教育研究室、韓国公州大学校師範大学教育学科 編
元兼 正浩 監修
日韓中3カ国の事情を解説

 本書は日本・韓国・中国の3カ国のそれぞれの教育制度について概説を行った書籍である。いわゆる大学での「教科書」として教育制度を取り扱う書籍として異色なのは、3カ国の記述をほぼ同じ分量で展開しているという点である。
 第1部を「日本編」、第2部を「韓国編」、第3部を「中国編」として、各部の記述についても構成をそろえている。各国の教育制度事情を知るべく通読するという読み方も可能であるし、トピックごとに3カ国の事情を比較するという読み方も可能になっている。読み手の関心の持ち方に合わせて読み方を工夫することができる点は、本書の特徴といえるだろう(従って、比較しながら読むには目次の活用が重要となる)。
 読み進めると、意外な共通点に驚くケースもあれば、思わぬ相違点に気付かされることもある。都市部と地方の社会経済環境の違い、教育行政・学校経営の位置付け(国の行政・政治や地方の行政・政治との関係性)、教員の資格や雇用の状況、生涯学習に対する考え方など、比較によって日本の制度の特徴をより深く知ることができる。韓国・中国とも制度の変化や、予算を伴う施策に関するフットワークの軽さが印象に残った。日本は同じくらい変化(に対応)できているのだろうか。韓国・中国は日本をどう見るのだろうか。
(2420円 花書院)
(川上 泰彦・兵庫教育大学教授)

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