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一刀両断 実践者の視点から【第305回】

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労働者の勝訴

 《コロナ懸念し在宅勤務の教諭を欠勤扱い 大阪市に賠償命令》(日テレNEWS)という見出しの記事が目を引いた。原告は、労働組合の海外出張で帰国し自宅待機となったという。筋を通せば通りそうなものだが、迷惑を掛けるかもしれないと考えれば想定されるリスクを考えて出張を控える選択肢もあったであろう。体制に異を唱える組合からしたら違法にならない限り筋を通す事になる。
 学校や教委はその対応を認めたくないという感情が働き無理を承知でそうした処置をしたのだろうが、それはあまりに浅はかで、待ってましたと訴えられたように思われる。賠償金はわずかでも原告側の勝訴には間違いないから、してやったりとなる。こうしたやり取りは近年あまり見かけなかった。
 ある出来事を思い出す。3月30日に退職願いを出したトラブル教員が翌日の夜中に撤回を申し出た案件があった。すなわち4月1日の辞令効力からすれば間に合うが、後任も決まり収まっている所をやり直す事になり多くの方に労や混乱を来す理由から撤回を認めない判断を先輩達がされた。
 私もこの人物の素行からして身勝手な振る舞いに許せない気持ちは十分に分かるが、撤回は出来ないと主張した。やはり裁判になり数年後慰謝料も含めて敗訴した経緯がある。すなわち感情では負けると言う事になるのである。
 記者会見で得意満面に勝訴を誇る姿に労働者としての自信は見て取れるが、この様子を生徒達はどう見てもいるだろうか。
 この視点で冷静に判断し行動する事が必要であり、主義主張や感情のぶつかり合いは尊敬の対象にはならず、低俗に見えてならない。そもそも安心安全をどこよりも保証するのが学校であり教師ならば、生徒や同僚に迷惑が想定されるなら海外出張は控える判断を私ならしたと思う。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

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