通級での教科指導も可能に、文科省提案 教育課程企画特別部会
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文科省は4日、中央教育審議会の教育課程企画特別部会に、通級指導教室で教科指導を可能とする案を示した。通級指導を校長判断で柔軟に利用できるようにもしたい考えだ。通級指導をはじめ、特別支援教育に関しては指導体制の充実や教員の専門性向上などが以前から課題となっており、実現に向けては条件整備の推進が重要になる。
同省が令和4年に実施した調査によると、公立小・中学校の通常学級に在籍する児童・生徒のうち、8・8%に学習面・行動面での困難があることが明らかとなるなど、特別な支援の充実は通常学級でもより重要となっている。
通常学級に在籍しながら、障害に応じた特別な指導を一部の時間を取り出しで受ける通級指導では、年間35~280単位時間を標準に、自立活動を参考として、障害に応じた指導を行っている。通級指導を受ける小・中学生は20年間で5・4倍にも増えており、平成30年度からは高校でも制度化した。
同省は通級指導について「各教科について教育課程上の特例的な取り扱いができないなど、障害の状態等に応じたきめ細かな指導の実現に課題がある」と指摘。発達障害や情緒障害への配慮が行き届いていない実態もあるとの認識を示した。
その上で、通級指導で障害による困難の改善・克服に向けた指導に加えて、障害の状態を踏まえて必要な場合には各教科の指導を可能とすることや、自立活動を取り入れることの明確化を提案。35~280単位時間までを標準とする授業時間数も見直す。
また、通級指導や、通常学級での授業でも、各教科の目標・内容を
・障害の状態を考慮したものに替える
・取り扱わないことを認める
―など、障害の状態を考慮した教育課程編成を可能にする案も提示した。
通級指導の利用・終了の判断について同省は、教育委員会と連携して校内委員会などで決定する流れを示しているが、自治体ごとに異なっており、教委の判断を長期間待たなければならないケースも多い。通級指導を利用しやすくするため、これまで以上に校長判断で柔軟に利用できるための方策が必要だとした。
ただ、課題もある。通級指導で教科指導をする場合、他校通級の際には学校をまたいだ教科指導の連携が必要となる。自校通級や巡回指導の促進が求められる。
また、教科指導については現在でも、読みに困難がある子どもに対する指導の一つとして、国語の題材を活用するというように、各教科の内容を取り扱うことも可能だ。
一方、同省は教科の遅れを補充する指導、単なる教科の指導にならないよう求めている。「補習塾」化しないよう、明確な基準が求められそうだ。