戦後名古屋市の社会科教育はどのように始まり、展開していったのか
12面記事
出井 伸宏 著
有志が議論重ね、新たな実践
戦後、小学校の教科は「従来の修身、日本歴史、地理の三科目がなくなって新しく社会、家庭、自由研究」が設けられるなど変化の波にさらされた。その新教育課程の特色を示すのが「社会科の誕生」。「その目標とするところは、児童が社会に正しく適応でき、かつ望ましい人間関係を実現していくとともに、社会を進歩・向上させるような態度や能力を養うことにあった」(『学制百二十年史』文部省)
新たな教育に向き合わざるを得なかった黎明期に、名古屋市ではいち早くジョン・デューイの教育理論を学ぶ「新教育を語る会」が発足し、社会科ができるという中央情報を得て「社会科同好会」「社会科研究会」の胎動が始まる。
現場をリードする「名古屋市小学校社会科作業単元」や「名古屋プラン」、現場学習の参考になる郷土資料、「名古屋市社会科教育課程」の作成などに、社会科研究会・同好会の会員が尽力する様子が伝わる。
著者自身、名古屋市社会科研究会の事務局長、委員長を歴任。本書のテーマは名古屋大学大学院博士後期課程での研究として取り組んだものだ。
手弁当で有志が集まり、議論を重ね、新たな実践の端緒を開いていく様子など、当時の熱気あふれる雰囲気に触れることができる。戦後の地域における教育断面史として興味深い一冊となった。
(2200円 黎明書房)
(矢)
