日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

東京・青ヶ島の学校から ~日本一人口の少ない村の学校での取り組み~【第5回】

NEWS

pick-up

素敵なお兄さん・お姉さんの訪問

 2学期が始まってすぐの9月3日(火)から6日(金)までの4日間、青ヶ島小中学校に賑やかなお客さんが来てくれました。5名の明星大学の学生さんで、へき地教育研究部の部員でもあります。大学で教育職員となる勉強をしながら、長期休業期間などを利用して、全国のへき地校や小規模校で1週間程度の実地活動をし、その費用は、学業の傍ら全て自分たちで賄えるようにお金を貯めながら研究を深めているとのことです。今回の青ヶ島の滞在では、宿に素泊まりし毎日自炊をして、学校へ通ってきてくれました。
 そもそもの始まりは、昨年末にへき地教育研究部の田川健太さんよりお便りをいただいたことがきっかけでした。数ある研究候補地の中から青ヶ島を選んだのは、上級生となった田川さんが長らく温めていた「東京の島の教育活動を見てみたい」という思いからだということを後日教えてもらいました。青ヶ島には、高校が無いことから、中学卒業後は進学のために島を離れなければならない事情があり、大学生世代の若者もいません。教育実習などで来てもらえる見込みもほとんどないことから、大学生と交流できる機会はとても貴重なため、ぜひとも来てもらいたいとお願いをしました。
 ところが、来てほしいと思ってもそう簡単にはいかないのが青ヶ島です。島に出入りするためには、必ず八丈島を経由して、船かヘリコプターを利用するしかありません。青ヶ島には港が1つのみで、天候の影響を受けやすく、季節によっては船が中々運航出来ない日が続く場合もあります。ヘリコプターは運賃が高く、視界が悪いと飛んでくれません。
 学生さんが事前の打ち合わせのため島に来ていただくことになっていたのですが、天候に恵まれず、3度目の正直でようやく対面が叶い、9月の再会を期して打ち合わせを終えることができました。正直なところ、9月は台風が発生しやすいため、当日も予定通り来島できるか不安でしたが、蓋を開けると良い天気の中来ていただくことができました。
 フレッシュな若者5名を前に、学校の子供たちは興奮気味でした。最初の対面時こそ緊張していましたが、ゲームを交えての自己紹介が始まると、心の距離は一気に近づいていきました。大学生たちには、学年ごとに担当を決めて入ってもらい、1日中一緒に過ごし、休み時間や給食でも一堂に会して交流しました。これらの時間は、子供たちにとって貴重な経験となりました。訪問期間中、子供たちが家に帰って真っ先に報告するのが大学生たちとの出来事だったという話を保護者から聞きました。青ヶ島小中学校は、都内の学校と比べても若い先生の割合が高い方なのですが、やはり子供たちにより近い年齢の若者にはかないません。
 島での小さなコミュニティーの中で人間関係が固定されがちな本校では、今年度、特に外部の人たちとの交流の機会を捉え、関係を拡げていこうという方針を立てていました。今回のお客さんの訪問では、予想以上に子供たちの素敵な笑顔が見られました。引き続きこのような交流を体験させてあげられたらという思いを改めて強く感じた4日間でした。


プールでも一緒に

(下川耕史・青ヶ島小学校副校長)

東京・青ヶ島の学校から~日本一人口の少ない村の学校での取り組み~