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東京・青ヶ島の学校から ~日本一人口の少ない村の学校での取り組み~【第23回】

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生徒会と児童会を結合した「くろしお会」

 「私は、小中学生全体から意見をもらい、児童・生徒全員の理解と協力を得られる取り組みをしたい」。
 生徒会会長へ立候補した生徒の演説の一部です。より良い学校とするために、どのように学校生活を改善していくつもりなのかを明確に訴えている素晴らしい演説でした=写真。
 青ヶ島小中学校では、生徒会会長が「くろしお会」の会長を兼務します。くろしお会は、児童会と生徒会を統合し、全ての児童・生徒で構成され、くろしお会役員会と文化委員会を設置して組織し、その活動については生徒会会長が主導して進めていくものです。
 9月25日(金)の放課後、令和2年度の生徒会役員選挙が行われました。役員の任期は、今年10月から来年9月末までの1年間です。役員が3年生から2年生へとバトンタッチされる機会となります。2年生は、これを機に、学校の中心になるという意識が高まり、その責任の重さを感じるようになります。
 今回の役員選挙は、会長候補(生徒)1名、副会長兼書記候補(生徒)1名の信任投票として行われました。その理由は、現在の中学3年生2名が卒業したあと、現状のままで生徒数が推移すれば、来年度には現中学2年生2名のみの中学校となってしまうためです。
 青ヶ島中学校は、少子化の影響から、ここ数年、生徒数が減り続けています。それに伴い、副会長と書記を兼務したり、放送委員会と図書委員会を統合して文化委員会としたりするなど、人数に合わせて組織を変更してきました。
 なお、くろしお会の副会長(児童)は、併設する小学校の5・6年生から選出されることになっており、前回は該当者なし(5・6年生が不在)でしたが、今回は在籍する5年生が担当することになりました。
 くろしお会活動は、青ヶ島中学校の教育課程の中でも重要な学習活動の一つです。そのため、少人数となったくろしお会活動においては、教員の工夫と苦労が表れてきます。くろしお会を担当する、森田駿教諭は、青ヶ島小中学校のくろしお会について次のように語ります。
 「中学生にとって、くろしお会活動は学校運営のための自治活動であり、生徒主体の学校づくりには欠かせないものです。人数が少ない学校だからこそ、児童・生徒は学校のどんな些細なことにも関心をもって生活を送っています。小学生や中学生に政治への関心をもたせることは容易なものではありませんが、この学校におけるくろしお会活動を充実させることで、民主主義をより身近なものとして学ぶことができる環境が整っていくものと考えています」。
 将来の青ヶ島を担う子供たちのために、と真剣に考えるからこそ、この島の教員は日々の工夫と努力を惜しまないで教育活動に専念します。昔から続く、青ヶ島の教員の心意気と伝統が感じられます。
(木下和紀・青ヶ島小中学校 校長)

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