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令和5年 通常国会質疑から【第6回】

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行財政

 6月に閉会した通常国会では、予算案・法案審議の他にどのような質疑があったか。衆議院文部科学委員会、参議院文教科学委員会などでは、まだ、あまり明らかになっていない政府の考え方などが見えてくる。3月17日の参議院文教科学委員会では、自民党の今井絵理子氏が、中学校保健体育で指導する「ダンス」について質問。特別支援学校での実態についても訪ねたところ、政府側が実態を把握していないことが明らかになっている。

教員の不安、どう解消

 今井絵理子君 平成二十年の中学校学習指導要領の改訂により、ダンスが二十四年度から必修化されました。小学校二年生から私はダンスをやってきたんですけれども、今の子供たちをとても羨ましく思います。
 一方で、教員養成課程でダンスを学び、自信を持って教えることのできる現役の先生方はまだ余り多くはないかもしれません。鹿屋体育大学による中学校教員を対象としたダンス授業の指導状況調査、令和元年度に行っているんですけれども、それによると、ダンス授業の指導に対しては八五%が不安があると回答し、その理由としては、ダンス経験や指導経験の不足、また評価が難しいといった多岐にわたる理由が挙げられています。
 そこで、お尋ねします。指導に当たる教員の不安解消に向けて、今後、文科省としてどのような取組を進めていくのか、伺いたいと思います。

課題把握に努める

 スポーツ庁次長 ダンスの指導につきまして、体育教員の資質を向上させることは大変重要なことと認識をしているところでございます。
 体育授業におけるダンスの指導につきましては、中学校で必修化したことを契機に、平成二十五年の三月に、小中高、各段階向けの表現運動及びダンス指導の手引を作成し、発達段階に応じました指導や実際の授業づくりに活用していただいているところでございます。その後、ダンス指導などの体育指導の充実のため、昨年四月、体育を専門としていない小学校教員を対象とした体育指導の手引を作成したところでございまして、また、その映像資料の作成にも現在取り組んでいるところでございます。
 今後につきましては、これまで作成した手引や映像資料の活用状況等も踏まえながら、ダンスを含めた体育授業における課題の把握に努め、必要に応じて教員にとって指導の参考となる資料の提供などについて検討してまいりたいと考えているところでございます。

外部人材の積極活用を

 今井絵理子議員 ダンスというのはすぐ学んで覚えられるようなものではないと私は認識をしていますが、例えば外部人材の活用ということでお聞きしたいと思いますが、教員に対する研修の充実によって不安を解消したり、より高度な指導技術を身に付けていただくことは重要なことだと思いますし、推進していただきたいと思います。
 同時に、外部人材の活用についても積極的に考えていくべきだと思います。
 私の下にダンス関係者が訪ねられ、プレゼンテーションを聞かせていただく機会もたくさんあります。例えば、理学療法士などの医療関係者とともに考案した脳の発達を促す動きや、また障害特性に応じた動きを取り入れたダンスを考案し、普及に努められている方たちもいます。このような民間の人材やノウハウを活用することで、ダンス科目が一層効果的で充実したものになると考えています。
 現在、国としてダンス科目における外部人材の活用に資する予算は、令和五年度の予算案には、多様な武道等指導の充実及び支援体制の強化として、指導内容や指導方法等の工夫について実践研究を行うものがあります。この事業は平成二十七年度から始めていますが、この事業による効果検証も私は必要だと考えます。
 そもそも、ダンスが必修化された後に行われた平成二十六年度実施状況調査によると、外部人材の活用はたった一割程度。それ以降、今日まで八年間、調査は行われていない。現在の状況を正確に把握することができないと思います。
 そこで、現在のダンス科目の実施状況を調査するとともに、外部人材の活用を積極的に推進すべきだと考えますが、御見解をお尋ねします。

授業充実に努めたい

 スポーツ庁次長 体育授業のダンスにおきましては、感じを込めて踊ったり、イメージを捉えて自己を表現したりすることの楽しさ、喜びを味わうことができるようにするため、教員の指導力の向上のみならず、専門的な知見や技術を持った外部人材の協力を得ることは大変重要であると考えているところでございます。
 先生御指摘のように、令和四年度のスポーツ庁の委託事業につきましては、教員のダンスの指導力向上を目指した研修会の実施、あるいは、学校、地域の実態に応じました外部人材の活用によりましてダンス授業の充実を図る取組が十五の自治体で取り組まれているところでございます。
 このダンスにつきましては、子供たちの捉えということでございますが、過去に実施をいたしましたスポーツ庁の調査におきましては、ダンスについて、楽しかった、あるいはやや楽しかったと回答した生徒が六割、また、もう一度授業でやりたいと回答しておる生徒が約三割以上ということで、子供たちがダンス授業を楽しみにしているという状況が読み取れるところでございます。
 御指摘ございましたこの外部人材の活用も含めまして、スポーツ庁といたしましては、子供たちが生涯にわたって豊かなスポーツライフを継続できる資質や能力を育成するために、ダンスを含めた保健体育授業の充実に努めてまいりたいと、また、そのための予算確保についても努めてまいりたいと考えているところでございます。

支援学校での実施状況は

 今井絵理子議員 基本的には自治体による取組ではありますが、先ほど御答弁にもあったように、国としても例えば外部人材を後押しするような予算措置なども是非検討していただきたいです。地方やまた離島では外部人材の確保が困難な場合があります。そのような地域にも質の高いダンス教育、指導ができる、提供できるように、例えばダンスインストラクターの派遣に加えて、リモートによる指導の現実、実現などを検討していただきたいと思っております。
 ところで、特別支援学校におけるダンス科目の実施状況について教えていただけませんでしょうか。

答えられない

 スポーツ庁次長 このダンスにつきましては、もちろん特別支援学校も含めまして指導するということでございますけれども、恐縮な話、今どのぐらいの実施状況かということにつきましては、今数字持ち合わせておりませんので、恐縮でございますが、ちょっとお答えができないという状況でございます。申し訳ございません。

障害の特性に応じた指導の研究を

 今井絵理子議員 是非、特別支援学校のそれぞれの障害種別において、ダンスの取組というのは、指導の体制というのは、私は様々違うと思っています。その障害の特性やまた個性に応じた指導というものをしっかりと研究していただきたいと思っております。これはスポーツ庁も含めなんですけれども、文科省の初等中等教育局特別支援教育課と連携を取りながら、しっかりと取り残さないようにしていただきたいなと考えております。よろしくお願いします。

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