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令和5年 通常国会質疑から【第11回】

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行財政

 6月に閉会した通常国会では、予算案・法案審議の他にどのような質疑があったか。衆議院文部科学委員会、参議院文教科学委員会などでは、まだ、あまり明らかになっていない政府の考え方などが見えてくる。6月13日の参議院文教科学委員会では、立憲民主党の古賀千景氏が、教員不足問題に関連し、教員採用試験の時期を早める方針について質問。現状では既卒で講師として勤務している層が採用試験対策のため、講師として勤務しなくなるのではないかといった課題を指摘した。

採用試験前倒しの意図は

 古賀千景議員 教員採用試験が一か月前倒しって、六月十六日にというお話が報道されました。一か月前倒しされた意図を教えてください。

教師志願者の増加を図る

 総合教育政策局長 教員採用選考の早期化等に関しましては、五月三十一日に各都道府県、指定都市教育委員会等に対しまして方向性の提示というものをいたしまして、第一次試験について、まずは来年度については六月十六日を一つの目安としてできるだけ前倒しを検討していただきたいということをお示ししたところでございます。
 今回のこの方向性の提示の目的は、質の高い教師を確保し、そのために教師志願者の増加を図ることにあります。近年、教員採用選考の倍率低下ですとか受験者数の減少といった状況が見られる中で、教員免許状を取得しながらも採用選考を受験することなくほかの職種に流れる層も相当数いるところでございます。
 特に、中学校、高校については新卒受験者数が減少しており、今後の教員採用選考試験の前倒しにより、これまでほかの職種に流れていた層が教員採用選考の受験へ向かう流れができることを期待しているところでございます。
 いずれにいたしましても、教職の志願者を拡大するには、採用選考の改善だけではなく、学校における働き方改革も含め、文部科学省、教育委員会、学校現場が一体となって多角的な取組を進めていくことが不可欠であるというふうに認識しております。

経験ある臨時採用が減るのでは

 古賀千景議員 新卒者の皆さんはそうかもしれません。しかし、学校には臨時採用教職員がいて、その臨時採用教職員が六月に採用試験があると、正規になりたい臨採者は多分四月から仕事をしないと思います。そこで、もう六月のテストに向けて頑張って勉強しようと思ったときに、四月から本当に欲しい経験のある臨採者が私は減るのではないかということを考えます。
 また、他県の様子を聞いたときに、鳥取県は、定数が百四十人だったそうですが、辞める方がいらっしゃるので二百人の合格者を出したと、そして辞退したのが百人です。だから、それぐらいにもう危機的な状況になっている。半分しか来なかったんです。
 また、今年も既に新採者が多数病休に入ったり、もう辞めたり、辞退したりしています。僅か、四月一日採用で四月三日で病休に入った人間もいます。
 そのような状況で、始業式までももたない、それぐらいの問題になっているというので、これでは、時期を早めるだけでは解決にならないのではないか、時期を早めてもすぐ辞めてしまう、時期を早めても合格しても辞めてしまう、このような状況が深刻だと思っています。この状況をいかがお考えでしょうか。

経験評価する特別選考など工夫

 総合教育政策局長 委員御指摘の点でございますけれども、教員採用選考試験の時期を早期化することの課題の一つといたしまして、御指摘のように、臨時講師等をしながら再び教員採用選考試験を目指している者が不利にならないような、試験負担への配慮をどうするかという点があるというふうに認識しております。
 この点につきましては、先般、文部科学省が提示いたしました方向性においては、既に多くの教育委員会において取り組まれているところではございますけれども、教職経験者を対象とした現職教員としての経験を適切に評価する特別選考を導入、活用することですとか、教員採用選考試験の一次試験合格者等については、翌年度の当該試験の免除等の工夫が考えられるところを示したところでございます。
 採用選考試験の前倒しに当たりましては、各教育委員会において、特に臨時講師としての勤務経験を積極的に評価する仕組みを的確に導入、活用していただくこと等により、採用選考の前倒しが、臨時講師を始め学校現場の教師人材の確保へ、支障につながることにはならないというふうに考えております。
 また、先ほども申し上げましたけれども、教職の志願者、非常に教師不足、本当に危機的状況にあるということを踏まえまして、教職の志願者を拡大するには、採用選考の改善だけではなく、学校における働き方も含め、文部科学省、教育委員会、学校現場が一体となって多角的な取組を進めていくことが不可欠であるというふうに認識しております。

令和5年 通常国会質疑から