令和7年通常国会質疑から【第6回】
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国会では、法案審議の他に、議員の提示した課題に対して政府が見解を明らかにする質疑が行われている。今年6月に閉会した通常国会のうち、教育関係の一般質疑の模様を紹介していく。4月15日の参議院文教科学委員会では、生理(月経)に関し、学校教育を通して、理解を促すことを求める質疑があった。
「生理」と学校
吉良よし子議員(共産) 三月末、SNS上で、生理用品を全ての公共トイレに設置してほしいと投稿した日本共産党の吉田紋華三重県議に対して、一つのアドレスからではありますが、八千件を超える殺害予告が届くなど、憎悪をあおり、女性を黙らせようとするような誹謗中傷、批判が寄せられているわけです。このミソジニーに基づくような誹謗中傷、殺害予告というのは断じて許されないし、強く抗議をするものです。
一方、この批判的意見、様々あるわけです。殺害予告にまで至らなくても、様々批判的な意見が湧いているわけですけれども、そのコメントを見ていると、どう考えても、この生理についての知識、圧倒的に不足しているとしか考えられないようなコメント、多数見られるんですね。
例えば、性欲は安定していないしゴムも買い忘れるとか、生理用品よりひげそりの方が生涯コストが高いという、生理とは無関係のひげとか性欲、射精などについてを引き合いに出す投稿とか、また、大人なのに自分の周期も知らないのかとか、急な出血はティッシュを詰めておけとか、生理が急に来て止められないのは膀胱の問題だから病院に行けというような、これはもうおよそ生理について理解ができていないとしか思えないような言説があると思うんですけど、大臣、こうしたコメント、生理を始め性に関する正しい知識の不足、理解不足によるものだと思いませんか。いかがでしょうか。
文科相 生理に関して、やはり理解が社会全体としてまだまだ男性たちに不足しているというのは私も痛感しているところでございます。
特に、学校におきまして生理用品が急に必要になったり、また忘れてきたりする児童生徒、この貸出しのために通常、保健室に生理用品を備えているところでございますが、各学校の状況によりましては、例えばトイレ等の生理用品の設置を行っているところもあるというふうに承知しているところでございます。
委員が御指摘のこのSNS上の投稿につきまして個別にコメントすることは差し控えさせていただきたいと思いますが、文科省としては、児童生徒が月経について正しい知識を身に付けて適切な行動が取れるようにすることが重要だというふうに思っておりまして、各学校においては学習指導要領に基づきながら、児童生徒の発達段階を踏まえた上で、例えば月経の仕組み、また月経時の心身の不調などについても指導が行われているところでございまして、文科省といたしまして、引き続き、児童生徒が月経について正しい知識を身に付けながら適切な行動が取れるように、指導の充実に努めてまいりたいというふうに思います。
吉良よし子議員 大臣おっしゃったように、正確な理解ができていない方がまだまだ多くいると。だからこそ、正しい知識を身に付けるということが大事だということ、まさにおっしゃるとおりだと思うんですね。
じゃ、実際に学校でこの生理に関して正確な知識教えられているのでしょうかということで調べてみました。
複数調べてみたんですけれども、保健体育の授業の中で、二次性徴に伴う体の変化ということで、声変わりや発毛、また女性であれば初経、男性であれば精通が起こるなどの記述があるわけですね。生理についての記述というのを見てみると、周期について、およそ二十八日に一回とか、生殖機能の成熟とともに安定するという記述になっているわけです。
ただ、実際の生理ということでいうと、毎月二十八日ごとぴったり来るということはまずないと。ぴったり来ないことが当たり前で、月経周期は正常でも二十五から三十八日と開きがあり、同じ人でも五から六日の変動が見られるということは婦人科のサイトなどに書かれている周知の事実だと思うんですけれども、だから、正常でも十日以上の差が周期といってもあるわけで、個人でも六日ぐらいの変動があるからこそ、突然生理が来て驚くということは成人になっても間々ある、よくあることだと思うんですね。しかし、そのことが教科書に書かれていないがため、いい大人が自分の周期も知らないのかなどという無理解なコメントにつながるんじゃないかと思うわけです。
また、二次性徴ということで、月経と併せて精通とか体毛の変化が一緒に扱われているから、ひげとか射精とかと同一視してコメントがされることもあるかと思うんですけれども、射精などと違って、生理というのはその出血を自分で止めることはできない、コントロールできないものだということが教科書には書かれていないんですね。若しくは、生理ナプキンの使い方についても全く触れられていないと。やっぱりこれでは正しい理解にはつながらないのではないかと。
大臣、この現在の教科書の書きぶりでは、生理について正確な知識を得るためにはまだまだ十分でない、不十分なのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
文科相 今の学習指導要領におきましては、小学校の体育科、中高の保健体育におきまして、月経、初経含めて生殖に関わる機能の成熟について指導することとされておりまして、どのように記述するかは各教科書の発行者の判断に委ねられているところでございます。
その上で、教科書におきましては、児童生徒の発達段階において繰り返し月経等に関する記載がされているところでございまして、また、例えば、小学校の体の変化の初経の部分や生殖機能の発達に関して、月経の周期の仕組み、また健康、思春期の体の健康、心身の不調を伴うことがあるなども記載されておりますが、やはりしっかりともう少し踏み込んでいかなければいけないかということに関しては、実は先般も橋本聖子先生がアスリートの生理の問題のお話をしてくださいまして、いかにそれがしっかりと対応されなきゃいけないかということが実は若者たち全般に足りないのではないかということを、アスリート中心にも体脂肪率を下げていき過ぎることの課題なども含めて先般御指導をいただいたところでございまして、私どもといたしましては、しっかりと委員の御意見を踏まえていきながら、次に何ができるかも考えていかなければいけないところでございますが、教科書に基づき、今はその指導要領に基づいた指導がされているものと承知をしておりますが、御意見も踏まえまして、私どもとしても、また次に何ができるかも検討させていただきたいと思います。
吉良よし子議員 更なる踏み込んだ記述の必要性というのも考えたいというお話で、それは大変大事だと思うんですね。
若い世代の意識ということでいうと、日本財団の十八歳意識調査では、女性でも生理について十分な知識を持っていると答えたのは四〇%にとどまっていて、男性だと一七・八%にとどまると。十分な知識が得られている状況ではないですし、一方で、同じ調査で、女性の七割、男性の六割が学校の授業で思春期の体の変化や生理の仕組みを教えてほしいと、正確な情報を教えてもらいたいというふうに答えているわけで、このニーズがある以上、やっぱり教科書の記述も含めてよく検討していただきたいと思うんです。
一方で、じゃ、どう教えているのか、学校の現場でということで、小中高、小学校、中学校、高校で保健体育等の指導をしている教員、養護教諭の皆さんにも私、お話を聞いてみたんですけれども、例えば生理用品についていろんな種類があるよということ、実際に触って、実物用意して知る機会を持つこととか、男女で知識の差が出ないように、一緒に、男女一緒に保健体育の指導をするようにしているとか、様々な工夫している現場があるとも聞くんですね。
一方で、しかし、それでもこの性の指導について現場でどのように扱うべきか分からないとか、教え方への戸惑い、タブー視というのがまだまだあるんだと。例えば、生理用品の使い方について、宿泊体験学習の直前に女子だけ集めて行うと。それ男子も含めてやればいいんじゃないかという思いはあるけれども、それを言って新しい取組をしようということには大変この現場が消極的な雰囲気があって、新たな取組がなかなかできないんだというような話も聞いたわけです。
こうした性に関する指導について何でここまで消極的になってしまうのかと、背景何があるのかということなんですが、その一つがお配りした学習指導要領の書きぶりなんですよ。ここ、下線引きましたけれども、これらの性に関わる指導について、発達の段階を踏まえるとか、保護者の理解を得るよう配慮することが必要だという記述があるわけです。文科省に事前に確認したんですけど、こうした配慮を求める記述というのがあるのは、学習指導要領の総則以外にはこの保健体育と男女相互理解等を求める特別活動だけ、つまり性に関する指導に関してだけ配慮を強く求める記述が特出しされていると。
こういう規定を置いていることが、やはり学校で教員が現場で性に関する指導をすることに萎縮することにつながってしまっているんじゃないかと私は考えるんですけれども、改めて、大臣、やっぱり積極的に正しい性の知識を伝えていくことが大事というのであれば、こうした性に関する指導において殊更に配慮を強調するようなことはやめて、ちゃんと積極的に正確な知識を伝えようということを発信すべきかと思いますが、いかがでしょう。
文科相 学習指導要領において、総則、各教科の内容取扱いでは、児童生徒の発達の段階を踏まえた指導を行うことにしておりまして、その心身の発育、発達に密接に関わる性に関する指導についても児童生徒の発達段階に応じた指導、配慮が大切だというふうに私どもも考えています。
この学習指導要領の改訂につきましては、現在、中央教育審議会におきまして専門的かつ総合的な議論をいただいているところでございますが、子供たちがまさに性に対して正しく理解をしていって、また適切な行動が取れるということはまさに重要なことでございますので、検討をしっかりしてまいります。
吉良よし子議員 検討していただくということで、大事だと思うんですね。
あわせて、やはり本当にこの現場での萎縮を生まないようにするというのは本当に大事なんですね。今、学校で正しい知識知りたいという声がある一方で、知れないままSNSなどに氾濫する性の情報に触れて、好奇心から子供たちが性暴力を起こすような事態まで起きているわけです。最近では小学生が性加害を行った事例というのも出ていると聞くわけで、そういう意味では、本当に学校での性教育というのがますます重要だと思うんです。
時間がないのでこちらで紹介しますけれども、今文科省が、性暴力の被害者も加害者もならないようにということで、生命の安全教育というのを進めていると。ただ、それは、実際にその生命の安全教育実施率というのは、小学校で四三%、中学校で二七・七%、高校で一三・四%と余りに少ない、低いんですね。
この普及が進んでいないというのは本当に問題で、改めて大臣、こういうふうにせっかくつくったものが普及しないような、性教育がタブー視されているような学校現場、やっぱり変えていかなきゃいけないと。そのためにも、妊娠の経過を取り扱わないなどといういわゆる歯止め規定などもなくしていって、性教育、ちゃんと積極的に教育として学校現場で取り扱えるようにしていくべきと思いますが、大臣、最後、いかがでしょう。
文科相 しっかりと個々の児童生徒の状況に応じまして個別指導も交えながら、着実な指導を私ども努めてまいりたいというふうに思います。
吉良よし子議員 是非歯止め規定はなくしていただきたいですし、配慮、配慮って言いながら、変に隠し、むしろ羞恥心をあおり、忌み隠すものみたいなことにしないで、やっぱり学問として性についてもちゃんと正しく知っていくと、それが犯罪なども防ぐことにつながるんだということで、積極的に性教育やってほしいということを求めまして、質問を終わります。