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令和7年通常国会質疑から【第16回】

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行財政

 国会では、法案審議のほか、議員が提示した課題に対して政府の見解をただす一般質疑が行われている。昨年の通常国会質疑のうち、6月13日の衆議院文部科学委員会では、「学校教育を取り巻く諸課題」に焦点を当て4人の参考人を招き、議員が質問を重ねた。

柔軟な学びのための方策は

 浮島智子氏(公明) 今国会において、いわゆる給特法について、私は七回ほど質疑に立った。その中で、学校の働き方改革の目的は、学校業務の三分類を徹底し、教師が教師でなければできない業務にしっかり集中できるようにし、教材研究や研修等に取り組む余白を確保することで、子供たちの特性や関心に応じた教育の充実を図ることにある、という点を訴えてきた。
 既に各地では、私自身も視察したが、鳥取の青翔開智中学校・高等学校、また、午後の時間を全て探究学習に充て、地域企業を巻き込んだ探究的な学びや体験活動を行っている渋谷区のシブヤ未来科、さらに、ビー・ザ・プレーヤー、自分の学びを自分で調整する力を育む石川県加賀市など、新しい流れが着実に、確実に進んでいると考えている。
 現在、中教審において、学習指導要領改訂に向けた精力的な議論が行われている。その中では、不登校の子供や特定分野に特異な才能を持つ子供、日本語指導が必要な子供たちに対する個別の指導計画の作成、日本語と母語の双方を見据えた学びの実現、各教科の授業時数から時間を生み出して子供たちの特性や関心に応じた裁量的時間を設定すること、さらに、学習指導要領の構造を、各単元における本質的な問いや重要な概念を知識を軸に整理したシンプルなものへと転換していくことなどが審議されていると承知している。こうした中教審での専門的な議論が前進していることに、大いに期待している。
 そこで、四人の参考人それぞれに伺いたい。公明党としては、柔軟な教育課程の実現を進めていくことが必要だと考えている。その中で、渋谷区のように、子供一人一人が多様で柔軟な学びを行える学校教育を進めていくという方向性についての所見と、実現のために必要となる方策について、参考人の皆様から教えてほしい。

 無藤隆白梅学園大学名誉教授 渋谷区などについては、指摘のあった学校において、実は幼児教育からのつながりを非常に先導的に図っている。その際、小学校、特に低学年の教育の進め方については、相当に柔軟な取組がなされている。これは、現行の学習指導要領においても、低学年の教育では合科や関連的な指導を十分に行ってよいと明記されているため、それに基づいて実施できる余地が多くあるからである。
 例えば低学年では、算数でリンゴが幾つかといった足し算を学ぶが、これは生活科の実際の活動の中で出てくる内容とつながっている。国語教材についても、教科書の教材だけでなく、文章に触れること、人とやり取りをすること、地域の人の話を聞くことなど、さまざまな学びの機会がある。こうしたつながりを意識することで、一定の授業時間の中でも、一割、二割程度は十分に柔軟に取り組む余地があるし、それによって、むしろ学力はより深く根差したものになると確信している。

 大森直樹東京学芸大学現職教員支援センター機構教授 私も、柔軟性や裁量という言葉は非常に大切だと考えている。ただし、柔軟性や裁量性という言葉は同じであっても、歴史の中で意味合いは少しずつ異なってきたのではないかと思う。多くの人が想像している以上に、戦前にも部分的ではあるが柔軟性や裁量性は存在していた。
 例えば授業時数は、週二十こまと定められており、年間千十五時間と言われるよりも分かりやすかった。そのため、教員も子供も、学校での学習や教育とはこういうものだという理解を共有した上で、今日は校外に出て遠足に行こうといった裁量や柔軟な判断が可能であった。
 これは戦後も同様で、一九八〇年代、九〇年代頃までは、年千十五こまという枠組みの中でも、三十五の倍数によって全ての教科や領域が割り切れる仕組みになっていた。音楽が七十こまであれば、三十五で割って二こまと分かるため、子供も教員も時間割を把握しやすかった。私の世代では、新学期に小さな時間割表をもらい、ランドセルのセルロイドの窓に入れて一年間使っていた。しかし、現在は三十五の倍数を崩してしまい、音楽が五十こまと言われると、今週は一こま、来週は二こまというように、教員は授業時数の調整に多くの時間を費やしている。
 かつてのように、シンプルな部分が明確に決められ、その中で裁量を発揮できる仕組みと比べると、渋谷区のように午前中は学習、午後は探究的・活動的な学びを行う実践は、戦前から続く優れた教育実践を継承する意味のある取組だと考える。ただし、それを実現するためには、相当な苦労が伴っているのではないかと思っている。

 堀田龍也東京学芸大学教職大学院教授 大事な点は三つあると考えている。
 一つ目は、弾力的に運用できる学習指導要領である。渋谷区のような取組が、どの学校でも校長のリーダーシップの下で実現できるような柔軟性を持つことが必要だ。次の学習指導要領は、その方向に向かっていると考えている。
 二つ目は、子供たちが自分の学びたいことを自覚できているかどうかである。さまざまな学びの中で、「自分はここに興味がある」と語る場が多いほど、子供たちは自覚を深めていく。他者の得意分野や関心を知る中で、自分の得意なことを調べてみると、既に取り組んでいる人がいたり、こうなりたいという憧れを持ったりする。こうした過程では、情報活用能力が大きく関わってくるため、小学校段階から適切な情報活用能力を身に付けることが重要である。
 三つ目は、教師の役割である。教師はティーチャーと訳されるが、既に知っていることを少しずつ子供に与えるという発想では、探究的な学びには対応できない。子供にとって信頼でき、頼りになるアドバイザーとしての役割が求められる。そのためには、教科指導とは異なるスキルが必要となり、この点に関する教員研修や意識改革が極めて重要になる。

 澤田稔上智大学総合人間科学部教授 探究型の学びが拡充していくことは、非常に重要だと考えている。
 この質問を受けて、二つの点を考えている。一つ目は、従来の知識中心の学習指導要領では、書かれている内容を教えるという形で対応できたが、探究型の学びは子供の主体性が前提となるため、教師がレールを敷くだけでは成り立たないという点である。そこでは試行錯誤や失敗が不可欠であり、時には子供に振り回される授業の方が望ましいとも言える。予想外の子供の姿が現れてこそ、探究的で主体的な学びが生まれる。
 二つ目として、学習指導要領の文言が、具体的にどのような実践と結び付いているのかが分かるアーカイブの整備が重要だと考えている。成功例だけでなく、失敗例や苦労の過程も含めて、デジタルで検索できる形で蓄積されれば、学校現場の大きな助けになる。未来の教室プロジェクトのような取組もあるが、縦横無尽に検索でき、自校で実践したい学びを具体的にイメージできる資料が整えば、教材のアーカイブも含め、教育現場にとって有益な基盤になると考えている。
(議事録を要約)

令和7年 通常国会質疑から