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韓国道徳科教育の研究

18面記事

書評

教科原理とカリキュラム
関根 明伸 著
教科原理の究明を試みる

日本の近隣諸国の一つである「韓国」。いかなる時流があろうとも、民間交流・民間外交は粘り強く継続されていると私は認識している。先日、済州島での某フォーラムに参加し、識者との意見交換や討論を拝聴する中で感じたのは、戦争の反対は「諦めない対話」にあると納得できたことである。
さて、日本では「特別の教科道徳」への取り組みが開始した。韓国では70年代に既に始まっている。戦後の両国の「道徳教育」は、その位置付けや在り方が常に問われ続けてきた。教科教育学的な視座から教科原理の究明を試みることは、今後、道徳科の在り方への探究が要請される両国において、喫緊の課題であると著者は指摘する。
韓国は、冷戦の終焉や南北融和が道徳教育の在り方にも重大な影響を及ぼしており、2015年告示の「教育課程」では「21世紀の韓国人」として求められる徳目的価値を「誠実」「配慮」「正義」「責任」の四つの柱として、新しい道徳科教育へと変貌している。
わが国も、教科教育学的な研究へのアプローチと実践、そして成果の蓄積。さらに科学的、学問的に道徳科教育の在り方に向き合っていくことは重要な課題。だからこそ、隣国の実践に学び「何のための道徳教育なのか」「自分の言葉としてどう伝えるか」を「納得」し、「行動」に移すべきではないだろうか。
(7560円 東北大学出版会)
(大久保 俊輝・亜細亜大学特任教授)

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