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シリーズ子どもの貧困(3) 教える・学ぶ

18面記事

書評

教育に何ができるか
松本 伊智朗 編集代表
佐々木 宏・鳥山 まどか 編著
政策や教育費の在り方、問い直す

 「シリーズ子どもの貧困」(全5巻・分売自由)の第3巻が本書。シリーズを紹介する。(1)生まれ、育つ基盤(2)遊び・育ち・経験(3)教える・学ぶ(4)大人になる・社会をつくる(5)支える・つながる―の5巻構成である。
 本巻「教える・学ぶ」は、“教育に何ができるか”の副題が付く。子どもの貧困への政策的対応で、大きな役割を与えられている「教育」。これを批判的に検討、その可能性を探る。近代の公教育は、社会的不利の緩和と固定化の両義的側面を持つが、現下の対策はこれに無自覚なものも多い。本巻は、その克服を目指す学術書でもある。内容は、3部構成で12の章立てである。子どもの貧困の議論は、ここから始まるのではないか。第I部は「<教育>化する『子どもの貧困』政策の再検討」で、「『子どもの貧困』再考」「生活保護世帯の子どもへの教育支援」や「障害のある子どもの貧困と教育」。それに続いて「外国につながる子どもの貧困と教育」の4章構成。
 第II部は、「教育と『お金』」で、「家計の中の教育費」「教育の市場化は子どもの貧困対策となるのか」の章。続く「教育費の家庭依存を支える日本人の意識」の3章構成。第III部では、「教える・学ぶの『現場』から」(5章構成)で、学校現場・教師に目を向ける。本書を通読すると、子どもの貧困議論の枠組みが分かってくる。誠に貴重な一冊。
(2700円 明石書店)
(飯田 稔・千葉経済大学短期大学部名誉教授)

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