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ヨーロッパの学校における食教育・家庭科教育

16面記事

書評

表 真美 著
高度に専門的な教師が少人数指導

 衣食住は、私たちの暮らしにとって欠かすことのできない重要なものである。そのありようは、国や社会、時代や地域によって異なり、それぞれ固有の特徴ある様相を示している。見ず知らずの土地に出掛けて行って、独特の風習や文化を見聞きしたり、体験したりするのは楽しいものである。
 本書は、家政学を専門とする研究者が、1年間の在外研究の間に、アイルランド、北アイルランド、ドイツ、フィンランド、マルタ共和国の学校を訪ねて、食や衣服に関わる教育の様子を紹介したものである。それらの国における学校教育制度や家庭科教育の内容や重点の置き方は違っており、その差異に関する情報は大変貴重である。訪問先の初等教育・中等教育で家庭科教育に携わる教師は、どの国においても、とても教育熱心である。その教師を養成する大学教育のシステムや内容も、日本と比べて充実しており、高度に専門的な家庭科教師が輩出されている。学校でも大学でも、調理実習の時間が重視されていて、十数人単位のクラスでのきめ細かい実習授業は、特別な支援を必要とする児童・生徒に有効であることが示されている。
 本書は、国際比較の観点から、食教育・家庭科教育の最前線の様子を示したものであり、そのことを通じて、わが国における教育的な課題を鮮やかに照射している。
(3024円 ナカニシヤ出版)
(都筑 学・中央大学教授)

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