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発達障害等の子どもの食の困難と発達支援

22面記事

書評

田部 絢子・高橋 智 著
見過ごされがちな課題あぶり出す

 特別支援が必要な子どもたちへの配慮は、以前に比べ、充実するようにはなっているが、当事者でなければ気が付きにくい事柄もまだまだあるのだろう。本書は、「食」に焦点を当て、当事者、保護者、学校に対して抱える困難と支援ニーズについて調査し、その課題をあぶり出し、今後、必要な支援、支援を可能にする方策などを提案する。
 発達障害のある子どもたちへの調査からは、食材が混じり合うメニューや、給食指導では当たり前に行われている「残さず食べる」「時間内で食べる」「みんなと一緒に食べる」などが苦痛となっている側面が伝わる。
 保護者には、子どもの「感覚過敏」「偏食」「咀嚼・嚥下困難」などの食の悩みの相談先も分からず、家庭内の問題にとどまりがちな事態へのストレスがある。
 学校は、食物アレルギーへの対応など、命に関わる課題が優先していることや、食に対する要望を個人の“わがまま”として許容しない現状も見て取れる。
 著者らは当事者の困難さに耳を傾けながら、文科省が示す「食に関する指導の手引―第1次改訂版―」に「個に応じた指導」「保護者との連携」「本人との合意形成」など特別支援教育と親和性の高い方法が提案されているものの、学校現場の認知度が低い課題も提起する。
 解決すべき教育課題として、まずは多くの関係者に認知、共有されることを願う。
(8800円 風間書房)
(矢)

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