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高校古典における古文・漢文の融合的な学びを考える

16面記事

書評

早稲田教育ブックレットNo.24
早稲田大学教育総合研究所 監修
興味・関心を喚起、「古典嫌い」払拭へ

 本書の前書きにあるが、平成17年度の教育課程実施状況調査によると、高校生の古文嫌い、漢文嫌いの割合は7割を超え、他の教科・科目と比べてトップを占めるという。評者も半世紀以上前にさかのぼってみると、古文や漢文の授業が苦痛だったことを覚えている。
 本書は、そういった状況を打破すべく、新しい視点からの研究成果の提言集だ。そのキーワードが「融合的な学び」である。学習者の興味・関心を喚起するために、どんな教材が、どんな授業がいいのかを示してくれる。
 取り上げられた事例が五つ、しかもそれらは誰もが知っている内容だ。清少納言に紫式部、和歌と漢詩における自然観・美意識、暗誦と多読を取り入れた学習、月と文学、劉邦と頼朝の英傑像を例とした比較学習、である。いささか乱暴にまとめたが、いずれの提言も実践したくなるものばかりだ。
 一例として、四つ目の月と文学を取り上げよう。ここでは、万葉の時代から近世に至るまでよみ継がれてきた月を素材に、古代の人々の「月」観を和歌、漢詩、物語等の「融合的学習」によって気付かせる試みである。
 わずか80ページ足らずの小冊子ではあるが、中身は濃縮され、一字一句もゆるがせにできない重みがある。次期学習指導要領の告示から2年、実施も迫ってきた。高校のみならず、国語関係者には一読をお勧めする。きっとやりたくなるはずだ。
(1320円 学文社)
(八木 雅之・元公立小学校校長)

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