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教育AIが変える21世紀の学び 指導と学習の新たなかたち

18面記事

書評

ウェイン・ホルムス、マヤ・ビアリックなど 著
関口 貴裕 編訳
東京学芸大学大学院・教育AI研究プログラム 訳
具体的事例に基づき解き明かす

 まず、読者にお伝えしたいことは、本書が英語の論文を翻訳ソフトで訳出し、15人の訳者がそれぞれの専門的見地から推敲を重ね完成させたという点である。AIと人との関係も、ここまで来たのかと複雑な心境になった。
 本書の趣旨は「編訳者はしがき」で、教育AIが指導と学習に何をもたらすかを具体的事例に基づき解き明かすことと述べる。本書は、第1部「生徒は何を学ぶべきか?―AIがカリキュラムに与える影響」、第2部「どのように?―指導と学習に対するAIの可能性と影響」で構成される。第2部では、教育AIを、生徒を指導する、生徒を支援する、教師を支援する教育AIに分類し、さらに14のタイプに分け、その特徴を分かりやすく解説する。最後に、教育AI時代の教育人材の育成の在り方に関する論考も付されている。
 教育関係者のAIに対する考え方はさまざまである。しかし、本書でも紹介されているOECD教育・スキル局のダーク・バンダム副局長の「人工知能は既存の価値を打ち壊す存在だが、教育がその最前線となりつつあることを理解している人はほとんどいない」という警鐘には十分耳を傾ける必要があろう。教育AIの今後を、コンピュータ科学者や大手AI企業任せにするのではなく、本書を手掛かりに、今後の学校教育の進むべき道を真剣に模索しなければならない時代が来ていると強く感じる。
(2750円 北大路書房)
(新藤 久典・文部科学省学校業務改善アドバイザー)

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