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教師のための濫読の道しるべ 「ひらめき」と「化学反応」を期待する50冊の本

12面記事

書評

西村 堯 著
多分野から印象深い数節を紹介

 著者には、本書に類する前著がある。「教師のための知的読書案内」(平成28年12月発行)だ。その際も書評させていただいたが、著者の「教師には幅広い知見が必要」という信念に共鳴した故である。今回もその姿勢は揺るがない。
 章立てにも、その姿勢が表れている。I章は「多様な知見に触れる」、以下、「世界に目を向け 時代を見つめる」「鎮魂の月 八月に読む」「言葉を磨く」「ポピュラーサイエンスを愉しむ」と続き、最終章は「教育についての考えを深める」である。興味そそる章立てであり、実際に取り上げられた書名の単語(寅さん、ゴリラ、ウンコ、習近平、雨のことば、スズメ等)を見ても、うなずけよう。
 紹介される書籍は50冊、前著に比べ半減したが、それだけに1冊1冊への思いはむしろ強化されている。体裁としては、本文中、特に印象深い箇所数節を取り上げ、著者の所感を記す形だが、読書の視点は明確で学び取る価値にも触れている。
 書名にある濫読の「濫」の成り立ちには「覗き込んで初めて見える、地中からふき出す泉」という意味があるそうだ。自ら本の泉を覗きに行く著者の姿勢に通じる。
 傘寿を過ぎてなお、学校への恩返しとばかり、教師たちに読書を通じてエールを送り続ける著者の姿勢こそ、学ぶべきもののような気がしてならない。
(2200円 学事出版)
(八木 雅之・元公立小学校校長)

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