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一刀両断 実践者の視点から【第192回】

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巨額の私財の使い方

 小泉八雲が暮らした松江に来てみた。多神教に憧れ、日本へやって来て結婚した。八雲は、雪女や耳なし法一などの幽霊伝説を文学として残し、東大での授業などその功績は驚くほどである。後任として授業を担当したのが夏目漱石であることはあまり知られてはいない。
 松江には、志賀直哉、武者小路実篤と多くの文人が滞在した。独特の霊気漂う「あめつち」の始まりの地に、惹かれた訳を感じる事ができた気がする。
 当時の状況を思いつつ、西洋人の父と日本人の母との間に生まれた八雲の子どもたちの人生に注目をしてみた。多くの日本人とは異なる外見から、当時の日本人はどこまで受け入れたかが気になったのである。自死した子どもがいたという。落胆した。
 隣接する松江城に立ち寄りその勇姿に圧倒されたが、これだけの城郭をどのようにして保てたのかが気になった。すると当時の銅山会社を経営していた方などが壊される間際で私財150円を出して買い取られたと説明された小さな看板が目に止まった。多額のお金を得てもそれを何に使うかでその人物の本性が見えて来る。
 ある意味、松江城は松江市民のシンボルであり多くの観光客を得る為に今の松江を支えている。お金があって宇宙旅行を楽しむのはいいが、そのお金があれば先進国の中で子どもの貧困最下位の日本全国へかなりの支援が出来るはずである。当時は揶揄されても未来に評価される生き方をしたいものだ。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

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