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一刀両断 実践者の視点から【第303回】

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中学校教員による殺人

 中学校の教員が殺人を犯したと報じられている。今回の事件は起きる前に予知予測することは難しかっただろう。普段の勤務や生徒とのやり取りからはその残忍さなどは見えなかったようである。
 果たして自分が同僚や校長ならこの人物の裏の顔に気付けただろうか。かなり困難であったかも知れない。周りに気づかれないように意識して演じた場合、親しく相談をする飲み会もなく、疎遠となっている学校現場の実情と個人情報保護やセクハラ対策がさらに疎遠を加速させているからである。
 関係者の驚きと心労は計り知れない。当初の評価とは異なる事実が次々に出てきており、加害者の二面性が明らかになってきた。
 確かにあの教師ならやりかねないとは思っていても本音が言えないのかもしれない。
 しかし、人相や態度には少なからず変化があったはずである。不自然さへの介入ができなかったのか、しなかったのか。人物を見定めて、違和感がある時に躊躇なく個人面談をして深掘りできる力量や権限を校長は持つべきではないだろうか。また、その演習もしないとこうしたスキルは磨く事は出来ない。
 今後さらにその真相がはっきりしてくるだろうから注視しなければならないが、言葉にならぬほど不憫なのは、家族や教え子そして信頼を裏切られた多くの人々である。その落胆と戸惑いは計り知れない。可能な限り再発をしない為の手立てをそれぞれの立場で考え実行する事が必要ではないだろうか。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

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