一刀両断 実践者の視点から【第684回】
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慢心を洗い流す処遇
元横綱・白鵬が大相撲の仕事から身を引くことになった。後輩横綱の下につくことに不満があったと報じられている。
こうした立場の変化は、教育界でも起こり得る。私自身、かつて面接を担当した校長の下に教頭として配属されたことがある。確かに、プライドが邪魔をして感情が乱れたのは事実だ。
そのとき、「捨てる身あれば拾う身あり」という言葉が脳裏をよぎった。後輩たちが次々と昇進し、気づけば自分が見上げる立場になっていた。だが、そうした状況をどう受け止めるべきかを教えてくれる人は、ほとんどいない。
それ以外にも、左遷と感じられる異動は何度もあった。辞職の意向を妻や父に伝えたところ、「いいわよ。一人くらい食べさせていけるから」と言われた。そう言われると、かえって辞めづらくなった。今でも、「じゃあ辞められないじゃないか」という臍曲がりな気持ちが湧いたのを覚えている。
振り返ってみれば、そうした処遇こそが、自分の慢心を洗い流し、後に再び輝くための試練だったように思えてならない。相撲の世界においても、土俵での栄光や強さだけでなく、「心・技・体」の最初にある「心」を重んじ、心の横綱であってほしいと願わずにはいられない。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。千葉県教委任用室長、主席指導主事、大学教授、かしみんFM人生相談「幸せの玉手箱」パーソナリティなどを歴任。教育講演は年100回ほど。日本ギフテッド&タレンテッド教育協会理事。)