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3訂 教職員のための学校の危機管理とクレーム対応 いじめ防止対策推進法といじめ対応を中心に

17面記事

書評

堀切 忠和 著
現場の「あたりまえ」適否問う

 法律の専門家の立場から、学校における危機管理を取り扱った書籍である。副題にもある通り、いじめ事案への対応に比較的多くの分量を割いているが、危機管理に関する全般的な理解を図るのに適した内容である。
 「学校が子どもの生活空間である以上、危険の芽を摘むことは不可能」という指摘は、学校における危機管理の根本である。だからこそ学校・教員は自らの「習い性」を自覚しながら、危機管理に向き合うことが求められる。本書はスクールロイヤーの立ち位置・利害関係の整理や、事故対応における道義的責任と法的責任の峻別など、危機管理全般に共通する内容に加え、私立・国立と公立では危機管理における前提が共通しない部分なども整理されており、大枠・全体像を理解する上で有益な情報がちりばめられている。
 これに加えて、本書では実務的な指摘も多い。安全配慮の範囲・責任に関する留意点や、いじめ事案等について学校が聞き取り調査等を進め、記録を収集・保存する際の手続き・配慮の他、クレーム対応における気構え(コミュニケーションの限界に対する理解)など幅広いが、いずれにおいても学校現場における「あたりまえ」の対応の適否が問い直されている。定型句のように「組織的対応」がいわれる中で、その実質化をどう図るか、本書を通じて考えてもらいたい。
(2420円 日本加除出版)
(川上 泰彦・兵庫教育大学教授)

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