日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

クロスロード 交差する視点(5)原初の創造性に立ち返る

10面記事

教科・指導

溝上 慎一 桐蔭学園理事長(元京都大教授)

 現在、次期学習指導要領改訂に向けた審議が進められている。資質・能力の三つの柱の一つである「学びに向かう力」を詳しく分析する中で、その根本にある要素として「初発の思考や行動を起こす力・好奇心」(以下「初発の思考や行動」)が提起された。
 この初発の思考や行動は、筆者の用語で言えば、「インサイドアウト思考」に当たる。最終的な解が見えない状態でも、自身の内なる思考(インサイド)を、他者や社会に向けて外化する(アウト)思考様式である。学校教育では、総合的な学習(探究)の時間や、各教科等で取り組まれるパフォーマンス課題などの活用型の学習で、この思考を働かせている。
 他方で、各教科等の習得型の学習ではアウトサイドイン思考を働かせることが多い。自身の外側(アウトサイド)で求められる正解や到達目標に向かって思考や行動を合わせていく(イン)思考様式である。このアウトサイドイン思考は学習の基礎・基本であり、決して軽視されてはならない。学習においてこの二つの思考は、バランス良く育てていくことが重要だ。
 思考や行動の「初発」部分は、インサイドアウト思考の本質的な特徴を表している。最終的にどのような解にたどり着くか分からなくても、自身の考えや解を生み出そうとすることが、インサイドアウト思考の本質であり、予測困難で変化の激しい現代社会において、問題を解決するために必須となる。それは「原初的な創造的思考」とも呼べる。
 創造的思考は、多くの人々が発想しないユニークで独創的な思考に限って社会的に評価されることが多い。だが、筆者はもっと思考の始まりの部分に立ち返り、誰もが発想する「新たな考え」を生み出す原初的な思考を重視したいと考えてきた。それは「人は分からないからこそ考える」のだという思考の原点回帰でもある。

教科・指導

連載