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孫子に学ぶ教育の極意

14面記事

書評

多賀 一郎 著
教師に通じる「将の資質」

 「孫子の兵法」は、ビジネス書でしばしば登場。それが、教育の分野でも取り上げられると、本書を通して知った。担当編集者の着眼と著者の該博な知見に敬服だ。学校は戦場でもある。子どもを守るために戦う教師の“戦いの極意”が詰め込まれた一冊。
 本書は「彼ヲ知リ己ヲ知レバ、百戦シテ殆ウカラズ」の孫子の名言に始まる、5章構成である。著者は、私立小学校に永年勤続の人。
 第一章は、「『孫子』の兵法と教育」で、教育とつながる孫子の精神や、教師の在り方に通じる“将の資質”(智・信・仁・勇・厳)などが述べられる。「算多キハ勝チ、算少ナキハ勝タズ」で、教師の“見通す力量”に目を向けたりもする。続く第二章は、「学校は戦場でもある」の内容。(1)対保護者(3例)(2)対子ども(12例)について孫子の言葉を引用しながら説く。それも実例付きだから分かりやすいことがこの本の特徴である。
 そして、第三章が「管理職の心得」となる。これも孫子の引用で(ア)仕える条件がある(イ)学校の敗北(ウ)よけいな口出しは失敗を招くなど、有能な教師をつぶしてしまうことのない管理職の在り方が示される。「『孫子』に学ぶ教師の力量形成」で、引用を使い教師のバランスの大事さ、慎重に動くことなどの第四章。第五章は名言の数々だ。
(1836円 黎明書房)
(飯田 稔・千葉経済大学短期大学部名誉教授)

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