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子どもの貧困と食格差 お腹いっぱい食べさせたい

12面記事

書評

阿部 彩・村山 伸子・可知 悠子・鳫 咲子 編著
格差なくす鍵は学校給食に

 朝昼夜と1日3食を食べることは、私たちの生活習慣となっている。成長途上にある子どもにとって、毎日の適切な食事を通した栄養摂取は不可欠である。
 それにもかかわらず、現在わが国では、金銭的な理由で食料が買えなかった経験を持つ子育て世帯が存在している。その数値は、地域・統計によって異なるが、数%から二十数%にまで達する。表面的には「豊かに」見える社会の中に存在している厳然たる食格差。この問題に関する徹底した実態分析と合理的な解決策の提案を示したのが本書である。
 著者たちは、社会政策、栄養学、公衆衛生、行政学を専門とする研究者であり、多様な視点から食格差の問題へとアプローチしている。ひとり親世帯など、収入が低く、時間的ゆとりのない家庭ほど、やむを得ず食費を削り、高カロリー低栄養のインスタント食品などを食べる傾向がある。その結果、肥満傾向が強まり、生活習慣病のリスクが高まる。他方で、夏休みの給食がない期間に1日2食しか食べられず、痩せてしまう子どももいる。
 本書は、こうした問題を持つ子ども・家庭対象のハイリスク・アプローチの支援・施策に加えて、ポピュレーション・アプローチによる全体的施策の有効性を提起する。完全学校給食実施と無償化の実現は、食格差をなくしていく確実な道筋を示しているのである。
(1620円 大月書店)
(都筑 学・中央大学教授)

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