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教育と愛国 誰が教室を窒息させるのか

16面記事

書評

斉加 尚代 著
毎日放送映像取材班
教科書問題、大阪の改革に斬り込む

 “誰が教室を窒息させるのか”と、副題が付く本書は2部構成。第1部が、「新たな・継続する『教科書問題』」。毎日放送が放映したドキュメンタリー番組〔2017(平成29)年7月30日〕の書籍化を図ったものである。ここでは、(1)戦後初の道徳教科書と検定制度(2)歴史教科書をめぐる攻防(3)新たな・継続する潮流―が主な内容。特定の教科書を批判し、その使用を妨げようとする議員や首長。一方、特定の教科書を採用させようと動く政治家。教科書検定の実情はどうか。これらの実例を示しつつ記述。この実情を、教師は知る要あり。
 そして第2部が、映像番組でディレクターであった斉加氏が、報道記者として十数年にわたり大阪で取材した内容の報告。「先鋭化する<政治と教育>―大阪でいま起こっていること」である。(1)大阪の「教育基本条例案」とアメリカ流教育改革(2)君が代「口元チェック」と「マネジメント」強化(3)変質した教育委員会と教師の締めつけ(4)前川喜平氏が語る政治と教育の攻防―が内容。そして、まとめは、“大阪らしい教育から民主主義教育へ”になる。この報告は、驚くべき事態。
 国家と教育、民主主義教育、地方自治と考えるべきことは多い。あらためて、教育を巡る現状に、幾つもの憂慮することがある。教育関係者の一読は、ぜひとも必要。
(1836円 岩波書店)
(飯田 稔・千葉経済大学短期大学部名誉教授)

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