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まちいっぱいの子どもの居場所

16面記事

書評

内田 宏明・福本 麻紀 編著
子どもに寄り添う現場の実践記録

 本書の特徴を一言で言い表すとしたら、生(なま)の実践記録書といえるだろう。東京都清瀬市で「子どもの居場所」づくりを進める著者の福本氏と、同じ地域に立地する日本社会事業大学の内田氏の共著によるものだが、良い意味での素人らしさが随所に見られ、読後感はほんのりする。以下、その点について書き進めてみたい。
 「素人らしさ」とはいささか失敬かもしれないが、「あとがき」で著者が述べているように「事実をもとに書かれて」いる点にある。かっこいいことではなく、「こんな風にしたら、こんなことになった」というように、取り組みの実際が書かれているだけだ。
 そこに垣間見られるのは真実であり、真面目さであり、愚直さでもある。それが胸にしみる。
 今、子どもたちを巡る環境は決して安心できる状況ではない。児童虐待、養育放棄、不登校やいじめ問題など、枚挙にいとまがないほどだ。そのような状況に、著者たちは果敢に立ち向かう。子どもたちの人権を守り、子ども自身の居場所を子ども自身に決めさせるために。
 本書は「子どもの居場所」の意義から始まり、その必要性や経緯、関わった方々の率直な声をそのまま載せている。巻末の資料も素のままで貴重だ。生さが終始一貫していて気持ちが良い。
(1728円 子どもの風出版会)
(八木 雅之・元公立小学校校長)

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