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教養教育と統合知

16面記事

書評

山脇 直司 編
「共通テスト」でも求められる力

 総合的な学習の時間が学校現場にいまだに浸透しない。特に、中学校や高校では暗中模索が続いている。この混乱の要因は何か、やって見せられない指導者による弊害であることは明らかである。加えて数名のオーソリティーに指導や助言が集中したため、小学校ではできても、中・高へは展開ができていない。
 表題の「教養教育と統合知」は主に大学教育で論議される内容ではあるが、実はその本質や幹は、「総合的な学習」に源流がつながっている。特定の学問を用いるだけでは解決できない諸課題が増え、さまざまな学問をメタレベルで統合する力、すなわち統合知が求められている。しかしながら学術界においては、自己陶酔的に専門の枝分かれが進んでいる。
 本書では日本が未来に向けた大転換をせねばならないことを著名な研究者たちが、異口同音に力説している。人格形成に欠かせない教養教育を、市民形成という視点でいま一度捉え直し、諸課題の解決へと統合する教養教育を再構築すべきと警鐘を打ち鳴らしている。
 小学校の「総合的な学習」と大学教育の教養教育と統合知に中・高が挟まれガラパゴス化せぬよう、また専門が上で市民の学びが下という傲慢では現実課題は解決しない。大学入試の出題内容が大転換する。その中に教養教育と統合知による難題解決へのアプローチを求める問題が多数課されるはずである。
(3564円 東京大学出版会)
(大久保 俊輝・亜細亜大学特任教授)

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