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Doing History・歴史で私たちは何ができるか?

12面記事

書評

渡部 竜也 著
高校「歴史総合」へ実用主義を提言

 オリンピックが近い、戦後最悪の日韓関係は改善されるのか? と海外から来た友に問われたら、どう答えるか。好むと好まざるとにかかわらず、この瞬間も私たちは、歴史の中に生き、自己の歴史を刻んでいる。本書を読み進めると、その感覚が研ぎ澄まされていく。「今、歴史している」と実感するのだ。
 高校での歴史教育が面白かった記憶が私にはほとんどない。本当は、一番関心を持ち興味を抱いてもよい時期のはずであるが、年号の記憶ぐらいしか残っていない。その改善の鍵は、実用主義にあると著者は強調する。「何のために学ぶのか」の問いに、説得力のある回答ができるだろうか。残念ながら、知識をひけらかすような自己満足に終始する授業が続いてはいないか。本来ならば「先生、歴史って本当に面白い、今が過去の集約で、今に未来があるんですね。実感しました」と、生徒に言わせたい。それが歴史を教える教師の醍醐味であってほしい。
 平易に書かれてはいるが、構成が絶妙で、「『歴史離れ』が起こっている?」から書き出され、「歴史をいかに教えるべきか?」「なぜ私たちは歴史的思考を学ばなければならないのか?」「歴史で私たちは何ができるか?」と、実用主義の可能性と課題でまとめている。2022(令和4)年から「歴史総合」が始まる。その構えを本書は教えてくれている。
(1100円 清水書院)
(大久保 俊輝・亜細亜大学特任教授)

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