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異年齢保育がなぜ社会性や協調性を育むのか?

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特集 教員の知恵袋

 日本では大多数の保育園が同年齢の子どもたちでクラスを編成していますが、海外で生まれた教育方法には異なる年齢の子どもたちを集める「異年齢保育」が少なくありません。日本でも徐々に知られるようになってきた異年齢保育には、どのようなメリットがあるのでしょうか。

異なる年齢の子どもたちでクラスを編成

 日本で一般的に行われている保育園のクラス編成は、4月1日時点の年齢を基準に3歳児だけ、4歳児だけといった同年齢の子どもたちだけを集めます。この教育方法は「年齢別保育」、「同年齢保育」などと呼ばれています。

 これに対して、異年齢保育は異なる年齢の子どもたちでクラスを編成するもので、「縦割り保育」、「混合保育」とも呼ばれます。

 まだ日本では少しずつ増えている段階ですが、過疎地域などで子どもの人数が少なく、やむを得ず異年齢保育になっているケースだけでなく、園の保育理念に基づいてあえて異年齢保育を実践するケースがあります。

欧州発の教育理念で導入を推奨

 異年齢保育を進める意義は、年上や年下の子どもたちと触れ合うことで自分と異なる存在を受け入れられるようになることです。

 昔は各家庭に兄弟や姉妹がいて、自然と年上や年下の子どもと触れ合ってきました。しかし、今は少子化によって子ども自体の人数が減り、そうした機会を持てる子どもはごくわずかになってしまいました。

・思いやりの心やコミュニケーション能力も成長

 異年齢保育が子どもたちに与える最大のメリットは、年下の子が年上を目標に、年上の子が年下に優しく接するなど社会性や協調性をより育むことができることです。

 同年齢保育だと、どうしても子ども同士の関係が横並びになり、競争的な側面ばかりが強く出てしまいがちですが、異年齢保育にするとチャレンジ精神や思いやりの心を育むことにつながります。コミュニケーション能力を向上させ、人間関係の構築の仕方も自然と学んでいくでしょう。人間力の育成には大きな効果があると考えられています。

・人間関係に上下が生まれるなどデメリットも

 一方で、異年齢保育にはデメリットも存在します。

・なじみのない相手と交流するのが苦手な子は、苦痛を感じる
・年上が年下の世話をすることをプレッシャーと感じる子どもがいる
・年上と年下の力の差が人間関係に上下をつけ、年上の子だけが遊んでいる状態になってしまうこと

 子どもによってはコミュニケーションを苦痛に感じることもあり、クラス編成には気をつけなければなりません。

・デメリット防止へ保育士の注意が必要

 こうしたデメリットが起きないようにするためには、保育士が十分に目を光らせる必要があり、異年齢保育に対するマニュアルや指導方法といったルールの策定が重要です。

 チェックすべき点は、年上の子が威圧的になっていないか、年上と年下で別々のグループを形成していないかなど。年上の子をしかるときは年下の子に聞こえないように配慮してあげると、クラス内の人間関係がスムーズに進みます。逆に、ほめるときはみんなの前でしてあげるといったことが子どもの成長につながります。

異なる年齢で楽しめる遊びとは

 幼児は1歳差でも言語能力や運動能力に差があります。異なる年齢の子どもたちが一緒に遊ぶとしたら、年下の子にハンディをつけたり、年下に合わせたルール設定にしたりするなどの工夫が必要です。異年齢保育にどのような遊びが合うのか、いくつかの事例を紹介しましょう。

・室内なら絵本の読み聞かせやごっこ遊び

 室内遊びだと、絵本の読み聞かせやごっこ遊び、お絵かきなどが中心になりそうです。
読み聞かせる絵本は0~2歳の乳児の場合、ストーリー性があるものより興味を引きやすい大きな挿し絵のものがぴったり。

 3~5歳の幼児になるとさまざまな登場人物が互いにかかわりあうようなストーリーを選ぶことで異なる年齢での遊びに結びつくことがあります。ごっこ遊びはお店や保育園遊びなどが考えられ、年上と年下で役割分担できるものが良さそうです。

・室外だとしっぽ取りや大縄跳び、玉入れなど

 室外で遊ぶなら、やはり子どもたちには元気に走り回ってほしいものです。それに最適なのがしっぽ取り。

 年上と年下でペアになり、年下の子のズボンに紙テープでしっぽをつけます。それを奪い合って遊ぶわけですが、このとき年上の子はしっぽを取られないよう年下の子を守る役割を果たします。力を合わせることや弱い子を守る気持ちを持つことができ、教育効果が期待できます。

 そのほかに、定番の大縄跳びや玉入れもみんなで楽しく遊ぶことができそうです。

保育士にとっても新たな教育方法を学ぶ好機に

 異年齢保育は年が違う子どもたちが一緒に遊ぶことで思いやりの気持ちや互いの違いを受け入れる心を育てるのにうってつけです。

 保育士にとっても多様な保育方法があることを知り、それを実践する良い機会になるはずです。子どもたちにとって最適な環境や指導方法の策定が保育園に求められています。

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