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子どもの問いでつくる道徳科 実践事例集

12面記事

書評

宮城教育大学上廣倫理教育アカデミー 著
野澤 令照 編
「探究の対話」通じ深まる思考

 輪になって座った参加者が自分たちで問いを決定し、毛糸を巻いて作ったコミュニティーボールを使って対話を進め、考えを深める活動「探究の対話(p4c=ピー・フォー・シー)」。本書は、仙台市や白石市を中心に宮城県内の小・中学校に広がっているこの取り組みを紹介する書籍の第2弾で、「特別の教科道徳」(道徳科)の実践事例集である。
 道徳の教科化に合わせて示された方針は、「考え、議論する道徳」。子どもたち自身が「感じ、考え、対話し、自己の生き方を深める」授業が求められる。そうした中、安心感(セーフティー)を基盤に一人一人の心や集団の絆を育てながら思考力を高め、対話を通して問いを深めていく「探究の対話」を、道徳の授業で生かす試みが活発化した。
 本書では、これまで宮城県内の小・中学校で取り組まれた、「探究の対話」を取り入れた道徳の授業実践事例を学年別に紹介。授業コンセプトや授業の流れに加え、授業の記録、子どもたちの振り返りとそこから教員が見取ったこと、授業を行った教員の声、指導的立場にある教員や大学の研究者のコメントを掲載している。
 授業記録には、発言の記録が載せられており、子どもたちの問いを大切にしながら、対話を通して思考が広がり、深まる様子を感じ取ることができる。「考え、議論する道徳」の具現化、「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けて、参考にしたい一冊だ。
(2200円 東京書籍)
(秀)

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