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ことばをめぐる17の視点 人間言語は「雪の結晶」である

16面記事

書評

アンドレア・モロ 著
今井 邦彦 訳
古代からの研究の歴史を解説

 いったん口から発したことばは、瞬時に広まり、訂正や撤回が許されない世の中になっている。文章は推敲という見直しの過程を経るが、ことばは即座に判断して発することとなる。サブタイトルにある「人間言語は雪の結晶」は、チョムスキーのことばだという。雪の結晶が気温・気圧等の条件への瞬時の反応として成立する点が言語構造と似ているという見方で、ことばの特質を見事に表現している。
 教師が発することばは、相手への励ましになると同時に心を深く傷つける刃ともなり得る。だから、ことばについて学び直し、ことばに敏感でありたいと、本書を開いた。
 本書は古代ギリシャのプラトンから現代のチョムスキーに至るまで、17の章で言語研究を紹介するものである。著者は例えを引用して解説を進めており、思考の訓練にもなる。
 モノに名前を付け、単語を結合させて文にする能力が人間を人間たらしめているのであり、言語獲得や言語間の変異、言語構造などの研究は尽きない。
 言語学者である訳者は、本書を高く評価しており「言語研究の歴史を見事に描いている」と記している。専門書であることから日々の教育活動に直結するものではないが、言語学の研究者や英文法の構造などを深く考えたい方には興味深い内容だろう。
(1870円 大修館書店)
(大澤 正子・元公立小学校校長)

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