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教員の異動、職能成長に影響 調査結果を書籍に

4面記事

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川上・兵庫教育大学大学院教授

 川上泰彦・兵庫教育大学大学院教授はこのほど、人事異動や職場環境が教員の力量形成に与える影響などをまとめた書籍「教員の職場適応と職能形成」(編著、ジアース教育新社、写真)を刊行した。長期安定雇用と定期的・広域の人事異動の中でキャリアが形成される「日本型教員人事」のシステムの現状や課題を、初任期の教員やある市の全教員、中堅教員を対象にした調査結果などを踏まえて明らかにしたものだ。
 本書は過去に研究グループで実施した3種類の調査から得られた知見を紹介。
 初任期の教員への調査では、初任の教員は2年目になる時、管理職や同僚の異動などを経験すると人間関係の再構築が必要になる、指導教員が配置されなくなる、計画的な研修の機会も減る―など、自分ではコントロールできない職場環境の変化を経験すると指摘。調査結果では、相談できる教員は徐々に増える傾向にあるものの管理職との相談関係では変動があり人事異動の影響が見られる、学校での勤務時間は年々減り睡眠時間は増える傾向にある―ことなども分かった。
 本書のまとめでは、川上教授が各調査結果と日本型教員人事が教員に与える影響を総合的に分析。
 管理職や同僚、自身の人事異動の流動性により、安定した人間関係を維持することは難しいが、職場適応や職能成長に影響を及ぼすことは確かであることや職場で自分は「仕事ができている」という実感があるとメンタルヘルスの面でも良い影響があることなどを列挙した。
 適応という面では、管理職による高次なマネジメントが必要で、初任期の教員を継続的に支援する、仕事の指示では適切な量を配分する、異動などによる新規参入者が円滑に解け込めるように働き掛けるとさまざまな効果が得られる―ことなどを指摘している。
 定価は2640円。問い合わせは同社Tel03・5282・7183。

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