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一刀両断 実践者の視点から【第75回】

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論説・コラム

講師を励ます

 《飲酒運転して事故、教員を停職6カ月 同乗していた教員2人も処分》(朝日新聞)という見出しの記事が目に飛び込んだ。
 二人が講師、一人は保健体育の正規採用のいずれも20代であった。該当校校長と教育長からため息混じりのコメントが出されていた。
 推測するに、講師となると、今年の試験の結果が絡んでいるようにも思える。講師は一年ごとに他校へと転勤させられながら、通常教員と同じ勤務をしながら採用試験へ挑戦することになるから不安は大きい。
 それを先輩達が汲み取って話を聞き励ます時間や場を設けていただろうか。こうした余裕が持てないのなら校長が聴くことはできるはずである。担任とは拘束される時間が異なるからである。
 私は校長室を地域と繋ぐ応接室として月に100名を越える方を招いて連携を深めた。また親の苦情はすべて私が引き受けた。その分、担任は子ども達に向き合えるからである。よく新規採用職員が泣きながら相談に来た。
 しかし、失敗もした。1人親家庭で育った講師を励まそうと、教員採用試験への応援を全職員で行い、合格を得ることができた。出身校でもあるその学校で勤務することを条件に、特別支援学級担任とすることを教委へ提示した。すべて順調に進み今後の成長を楽しみにして私は退職を迎えた。
 その翌日、後任の校長が本人は特別支援学級を持つ等の約束はしていないと主張したと言うのだ。教頭も教務も数日前、本人を交えて確認したので手のひらを返す変容に驚いていたと連絡が届いた。
 その裏切られ感は私の隙から出たのだと痛感した。1人親家庭で育ったので辛かったのではと思い込んだのである。頭をよぎったベテラン教師からの言葉に「一生懸命は見えるところだけ」と言う忠言である。この新規採用教員の性根が腐っていないことを願うばかりだ。まさに情に竿差せば流される。今も肝に銘じている。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

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