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子供の学力とウェルビーイングを高める教育長のリーダーシップ

12面記事

書評

校長、教職員、地域住民を巻き込む分散型リーダーシップの効果
露口 健司・藤原 文雄 編著
学校現場を尊重、親身に支える

 聞き慣れない言葉であるけれども、「ウェルビーイング」とは、まえがきを読むと「幸福(度)」と定義されている。子どもの幸福を実現することは、究極の学校教育の目標だ。
 従前の教育書ではこの点に関して、学校や教師のレベルで考えられていた。ところが本書は、教育長がこの実現に貢献できることをデータや教育長へのインタビューを通じて具体的な行動を明らかにしている。まず類書がない。
 それではどのような教育長なのか。各論は本書に譲るけれども、「愛他的使命」「情緒的安定」、ビジョンを明快かつ根拠を伴って説明し人々を巻き込むリーダーシップ「説得的図解」の三つが備わっている教育長になる。その姿は次の一文で表されている。
 <教員みんなが一つの方向性に向かって邁進する組織風土が教育長のマネジメントによってつくられている>
 教育長が部下や校長をリスペクトし、学校を親身になって支援すれば、これが可能になることが本書で具体的に書かれている。教育長のありようが、教育現場を動かすのである。
 学校と教育委員会がお互いをリスペクトしながら、難しい問題が山積する現状の学校教育に向かわなければならないことを本書は示唆する。全国の教育長の必読文献が誕生したことに評者は拍手を送りたい。
(2750円 学事出版)
(庭野 三省・新潟県十日町市教育委員会教育委員)

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