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一刀両断 実践者の視点から【第128回】

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論説・コラム

医師志望の加害者

 不都合をコロナ禍のせいにする輩が増えている。自らの責任を追求されない理由としても重宝なのだろうが、かなりの悪意が含まれる事で詭弁や放言が罷り通るようになっているのではないだろうか。
 確かにコロナ禍の影響が全然ないとは言わないが、想定されていたらそれを承知でコントロールする事こそが知恵であり、優秀と呼んで相応しいのではないだろうか。
 今回の大学入学共通テストで殺傷事件が起こった。加害者は、優秀な生徒だったと周りから言われ、その偶像を壊さぬように意識して育った事がうかがえる。学校の成績がいくらよくとも、その人間の一面に過ぎない。在籍している学校の教員には、指導に手加減をしなかったかと問いたい。エリート意識を増幅させていなかったか。
 加害者の青年は、周りの偏向した関わりで作られた被害者とは言えないだろうか。この青年を育て関わった周りの責任は問われにくいが、本人達は「あの時、もっと説諭しておけば」と回想している事だろう。
 さらに気になるのは、加害者が医者志望であった事だ。あなたを守るはずの医者が命を奪うような行為に走った現実がある。医者を学業成績で選抜し、免許を与えてきた在り方にも問題が指摘できる。
 これも道徳や倫理の授業が形骸化して衰退している現れであり、それを改善しようというパフォーマンスが通用しないと言うことを今回の事件は教えているのではないだろうか。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

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