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民主主義の育てかた 現代の理論としての戦後教育学

21面記事

書評

神代 健彦 編
新自由主義下の社会の分断克服へ

 戦後教育学の代表的論者として本書で挙げる東大の3M(宗像誠也、宮原誠一、勝田守一)を第1世代と呼ぶならば、第2・第3世代を指導教員に持つ評者も学生時代から慣れ親しんできた学説が、「べき論」として批判され、ポストモダン思想の潮流を受け冷遇されていく様を目の当たりにしてきた。
 だが、教育的価値を巡る論争が乏しくなり、矮小化された実証主義がはびこり、教職大学院で実務家が台頭する現在の教育界には、政策に飼い慣らされたこの現実世界をよりよくする力がどれほど残されているのだろうか。
 本書は戦後教育学という遺産の批判的継承と復権によって、新自由主義下で分断された社会や公共空間を取り戻そうという野心作である。「国民の教育権論」や「私事の組織化論」など、フィクションとされたこの理論装置の今日的な可能性を模索する。また、「発達論」や「教育的価値」「民主教育」など制度原理となり得る理論にも一つずつ丁寧に迫り、改めて戦後教育学を担った先人たちが当時、何と闘っていたのかを明らかにし、現代社会における課題解決、理想追求の可能性へと懸け橋を試みている。
 いま教育界にいるわれわれは目の前に立ちはだかる壁、教育的価値までも規定する現代社会のありようを、こうした蓄積に学びながら乗り越えていく必要があり、それこそがタイトルにある民主主義の育て方なのであろう。
(2860円 かもがわ出版)
(元兼 正浩・九州大学大学院教授)

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