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一刀両断 実践者の視点から【第158回】

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自己都合で離職しない教員に育てる

 <新採教員、約4%が自己都合退職 都教委>という見出しの記事が掲載された。教職は、「ブラック」と揶揄されている。「僅か4%」か、「4%も」だろうか。統計では一般企業の離職率は3年で30%を越えていることからすると、「極めてホワイト」ではないだろうか。
 本質的な問題は自己都合で辞めざるを得ない現実である。ひとりの人生設計からしたら振り出し前に戻る場合もあるだろうから実に深刻である。
 私の教え子たちは、結婚などの理由で一時的に退職したものを除けば、離職したものは皆無である。それには訳がある。
 簡単に離職しないための訓練や鍛錬をしている大学は極めて少ない。実務家教員でも困難事例に日々関わり当事者と共に対応してきた者は少ないからである。ましてや過去の役職ばかりに目を向けて採用した教員の場合は、能書きばかりで実学とはならない。
 こうした指導によってひ弱に育成された学生さんが荒波の教育現場で難破したり沈没したり座礁したりするのは当たり前なのである。それは想定される事であるが、誰も変えようという危機意識がない。
 役人や政治家の大義は絵空事になっている。何故なら、「担任も配置できないらしいね」と、日頃熱心に活動しているある議員が眉間にシワを寄せて相談してきた。「そんな事は30年も前から想定できていますよ」と、呆れながら私は答えた。これが我が国の政治家並びに行政のレベルなのである。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

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