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先輩教師に学ぶリアルな働き方 中学教師1年目の教科書

18面記事

書評

前川 智美 著
多様な業務への対応、中堅が解説

 東京都が新規採用した教員のうち、年度末を待たず自己都合で退職する割合が、昨年度は過去5年間で最も多くなった。評者も以前、4月1日に退職した例を聞いたことがある。これは職場環境の悪化とベテランの大量退職により「知識・技能」の伝承がうまくいっていないことも一因であろう。
 本書の著者は教員歴11年目の中堅教員である。新規採用になった若手教員が経験する学校勤務上のさまざまなケースについて丁寧に解説している。
 採用前の準備・心構えに始まり、初出勤時から4月当初にやること、次に学級担任と学級経営、授業づくり、生徒・保護者や職員室でのコミュニケーション、校務分掌や委員会・部活指導、職員会議など学校のあらゆる業務への対応ノウハウを解説している。さらにワークライフバランスやマインドセットなど現代の課題についても適切なアドバイスをしている。
 かつて学校では、知識・技能の伝承は職人的であった。部活動でも実績ある他校の顧問に教えを乞うた。しかし現在はどの教員にも余裕がなく、伝承どころではない。さらにGIGAスクール構想など新しい技術はベテラン教員では対応が困難だ。
 今こそ著者のような中堅教員が中心になって新しいスキルを生み出し、伝承していくべきであろう。その第一歩としてふさわしい本である。
(2486円 明治図書出版)
(中村 豊・公益社団法人日本教育会事務局長)

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