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新聞はSDGs授業の生きた教材になる 朝日新聞社がSDGs冊子を無料配布中

6面記事

企画特集

 気候変動を筆頭に地球規模の課題が山積する中、「日常のまなびの中のSDGs」と題されたシンポジウムが8月27日、横浜市の神奈川県教育会館で開かれた。同館が主催、朝日新聞社のウェブサイト「寺子屋朝日」編集部、SDGs記事を集めた冊子を発行する同社マーケティング戦略本部などが共催した。
 冒頭、基調講演を行ったのは、ESD(持続可能な開発のための教育)の推進に努めてきた及川幸彦奈良教育大学准教授。SDGs達成の鍵は教育にあることを改めて強調し、「現行の学習指導要領の方針は知識や技能の量より質を問うもので、国が策定した『ESD for 2030国内実施計画』と軌を一にしている」と指摘した。
 次いで、神奈川県内の教員2名によるESD実践報告が行われた。いずれもSDGs冊子に載った朝日新聞の環境関連の記事を授業に活用した例だった。
 大磯町立大磯中学校の吉村大志教諭は「海へ、マスクごみ『15億枚』 1年間に流れ出た数、環境団体が試算」という記事を中学3年生の社会科の授業に取り込み、生徒に解決策を考えさせた。
 この記事は、不織布のマスクの主原料が実はプラスチックであり、他のプラごみ同様、海洋汚染の要因になっているという意外な事実を伝えている。生徒はマスクごみを自分たちの身近な問題として捉え、授業では活発な議論が交わされた。「不織布のマスクの上に布マスクを着ければ、捨てる回数を減らせるのでは」といった独自性のある案も出て、吉村教諭は授業の手応えを感じたという。
 一方、「1頭の保護と40万頭の駆除 東京・荒川のシカ、捕獲騒動から1年」という記事で、小学校低学年の道徳の授業案を考えたのは、二宮町立山西小学校の高橋実富教諭。都内に現れた野生のシカが保護された一方、年間約40万頭のシカが駆除されている事実を伝えた記事だ。「自然愛護や命の尊さといったことを軸に、市民、農家、役場という多面的な意見に触れられ、心に揺さぶりをかけられる記事だと思った」と、その意図を語る。
 まとめのシンポジウムでは、マスクごみの記事を執筆した朝日新聞社の矢田文記者が記事の背景を語った。「ごみ問題を自分事として捉えるにはマスクという切り口は有効と感じた。自分に何ができるかを考えるきっかけとなればとこの記事を書いた」という話は吉村教諭の授業案とシンクロする。「学校でじっくりと考える時間を持っていただいたというのは、記者として本当にありがたいことだ」と語った。
 パネリストの一人、神奈川県教育委員会の二戸基明専任主幹は「今まさに正解のない学びが求められている状況であり、新聞記事について一人ひとりがどんな考えを持つかという授業案は非常に有効ではないか」と語った。及川准教授も「ESDには、あれもこれも詰め込む必要はない。授業テーマを上手に設定することで、学びを深めることができる」と今回報告された実践例を評価。「学びの環境さえ創出すれば、子どもたちは自ら学び始めるはずだ」とシンポジウムを締めくくった。
 朝日新聞社では、SDGsに関する様々な分野の記事をまとめた冊子「2030 SDGsで変える 2022年版」を無料で配布している。

 判型・頁=A4判64頁。
 募集概要=申し込みには朝日ID登録(無料)が必要。一人1冊まで応募できる。発送先は国内に限る。申し込みはhttp://t.asahi.com/wm6vから。
 問い合わせ先=朝日新聞社マーケティング戦略本部コミュニケーションデザイン部(2030sdgs@asahi.com)

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