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いじめと向き合う いじめは子どもを変えるチャンス

12面記事

書評

中南 勲 著
いじめる子も救う指導を紹介

 いじめに関するニュースが後を絶たない。著者は小学校教諭として長く勤務してきた。本書ではいじめをどのように認識し、子どもたちに学ばせたかを紹介している。
 まず「いじめとは何か」を現場(教室)から、また心理学、脳科学、動物行動学などさまざまな視点から分析している。その中でいじめの4層構造(いじめっ子、いじめられっ子、観衆、傍観者)を紹介し、特に第三者(観衆、傍観者)の共感力に注目している。
 次に「いじめを超える実践」として「ギャングエイジ(小学校中学年)期」の指導やいじめの起きやすい環境、いじめっ子・いじめられっ子の特徴に触れ、それに基づいた学級づくりや指導の実践を記す。
 また著者は、児童相談所勤務の経験もあるため、子どもを育てる現在の環境についても述べている。特に「愛着障害」に注目し、現代の教育を語るとき、子ども理解のキーワードになるとしている。
 最後に「教育が問われること」として提言を述べている。特に現在の「いじめゼロ」という目標がいじめ事実の安易な否定や隠蔽手段に陥る可能性をはらむとしている。
 著者は「いじめは子どもを変えるチャンス」「いじめ指導はいじめられた子を救うだけでなく、いじめをする子、それに加担する子を救うことも目的である」と強調している。多くの教師に、もう一度自らの指導を振り返るために読んでほしい一冊である。
(1650円 発行 東京図書出版、発売 リフレ出版)
(中村 豊・公益社団法人日本教育会事務局長)

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