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新グローバル時代に挑む日本の教育 多文化社会を考える比較教育学の視座

18面記事

書評

恒吉 僚子・額賀 美紗子 編
強み生かし多様性を包摂する社会へ

 本書が目指すのは、「課題先進国、国際化後進国」である日本の教育課題を、比較教育学、教育社会学、異文化間教育学の知見を活用して分析し、新グローバル時代における日本の教育の可能性を問うことである。
 第I部では「どのように多様性と向きあうか」を、第II部では「どのように多様性を包摂するか」を、第III部では「どのように国際化・多文化化できるのか」について、日本の教育の問題点を明らかにし、日本型多文化社会の教育ビジョンを提案している。
 評者が最も強く引き付けられたのは、第III部第8章である。編者の恒吉氏は、日本の教育の弱さ「アキレス腱」は、同質性のくびきから抜け出せないために社会の多様化を実現することができていない点にあると指摘する。では、その解決の方向性はどこにあるのか。本書は、その解決のための一つの可能性として、日本の教育の強みを生かすことを提案する。国際化・多文化化の視点から、日本の教育の強みを二つ挙げる。一つは、授業研究から派生した「レッスン・スタディ」であり、もう一つは特別活動から派生した「Tokkatsu」である。どちらも、国際モデルとして通用している点を高く評価している。この指摘には評者も意を得たりと納得した。「令和の日本型学校教育」の中核を成すものとして、自信を持って推進したいものである。
(3300円 東京大学出版会)
(新藤 久典・文部科学省学校業務改善アドバイザー)

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